詩人:旅人モドキ(左利き) | [投票][編集] |
どんよりした朝
やみ上がりでトンネルに入ると
車列のもたらす残響がおれを
陶酔させ未知への旅にいざなう
虫のささやきや鳥のさえずりに
ふみ鳴らすノイズは雲隠れ
のぼり坂を挟むうっそうとした森
すきとおった昼
射しこむ陽光が道標を照らす
やがて旅路はくだりへと転じる
懐かしの集落で静まるコバルト
突風のいたずらで砂浜に散る菓子
ここを好きなまま引き返す
汗ばみつつも探すデジャヴの断片
なごりおしい夕
暗がりをくぐりはかなき旅は果て
そと回りの仕事におれは猛進する
わが身をむしばむ筋肉痛と
まばたきノスタルジアの奇襲
ともに屈せず役目を全うする
帰宅してふとんの包容力に埋没
うらさびしい夜
望遠鏡でのぞく月のクレーターの様に
昨日の景色は鮮やかな高き幻となる
旅や生活が無意味でもかまわないから
余韻にひたり青写真へやき付ける
ふと疲れが癒えたかくすぐってみる足
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きみは移ろいやすく
それでいて落ち着きはらう態度をうかべ 幾多の心をかきまわす
澄ました表情に魅せられ 泣き崩れては憎まれもするが
その涙さえ称賛に値する
まばゆい輝きを放つかと思えば アンニュイな影を醸しだしつつ
鋭い眼光をちらつかせ一瞬で虜にさせる きみには到底かなわない
エナジーをまき散らし群集を草葉の陰に追いやるのに
七色のほほえみで優しくつつみこむんだ
あちこちで官能的なダンスが乱れ飛んでも
きみは見透かしたように悠然とふるまい いつもファとシの間にたたずむ
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反吐の逆あがりが算盤をけちらし ほころぶ薬玉が泣き叫んでも魂消てはならず
尽日あてどもなく流離う案山子らと
項垂れつつ長閑な宙づりの荒屋でかさぶたと化し
カスタネット風じゃんけんは奇天烈にののしられ
うぬぼれへの扉をなまめかしい陽炎が妨げても
なめらかな潮騒に被さるつつがない戯言は 少数決での思わぬ裏切りさえ手懐け
ひょろながい乱雲と絡まりあって たなびく億兆ものプリズムに惑わされ
懸賞に抜けめない覇王樹が渦まき 没分暁漢とコラボレーションした海象が
放射冷却の羅列でしめ括る街角のろし祭り
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最終便は遅れると告げられて
溜め息をえぐる彫刻刀がざっくりと気骨を削り
激するほどの心頭をなぜにたゆたう憂愁か
蒼海にちりばめた古のほおばる筋書を漁っても
貪ったはずの憧れはうわの空に吸いとられ
ひとみに浮かべる美しい涙までも悩ましげ
窮屈な蒸しぶろを脱してむかう源泉はうつろで
転寝もせずに待ちわびる宵闇のお迎えは
生ぬるい珈琲でさえ飲み干せない歯痒さがある
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優しさとたわむれる雨粒が染み渡りうるおう花
フライングぎみの酷暑が駆け抜けてだるかったよ
そんな夏バテしかけた状態を持ち直すきっかけだった
今おれは解きほぐせない縄にがんじがらめで
ああ恋から愛へと引き寄せるたづなを持てあますのさ
とても同胞をおめでたいムード作りで祝うゆとりが無いし
セカンドライフを満喫するための計画も練りあぐねるオジサン
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たわけるな
ケータイ片手につぶやく もう限界なのか 足りないボキャブラリーを嘆く
やり直しだ 作りかけた文を消去してやる テーマが命じゃ
どうやら難しいとサジを投げた ふがいない
妄想ならば膨らませ放題なのに もどかしい変換
まず服にはびこるカビを落とせ 無理をいえ いま炭酸を飲んでるから
同時進行してさ タイムリミットの日付が近いぞ
うるさいよ いろいろ観たいドラマがあるし
後回しにしよう 夜が明けたらでかける予定だよね
始まる連休 楽しくアグレッシブに過ごしたい
どうなる事やら この不可解なゲームって面白いや
たわけるな
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やればできるよ 今朝きみを励ました言葉が
耳鳴りのように反響する 降水に出くわし
うかつにも急ぐと身をすべらせ 血のにじんだ左ひじが チクチク痛む
きみの差しかける青い傘では 防ぎようもない紅炎が起つと パノラマを描く
架け橋のたもとを捜す浪漫と似て どう対するのか
踏み越えられぬ岩壁が阻んだら よじ登るより
うずもれた始祖鳥を発掘してやれ
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峠から傍観するホタルの織物
おれが初めてのぞむ街の光景だ アブク銭をしわくちゃに潰して
そよ風をやり過ごす
しょうがないでは済まなかった 弾痕うずく追憶
どうやら鬼ごっこは袋小路にハマる
虫酸よ走れ アオ シロ ミドリ たすきを掛けろ
天幕をさまようサソリにやられると
処方箋も無いか おれは闊歩している
不穏なウワサの及ばぬさびれた場末を
もやもやを払うけたたましい嬌声 おれ自身こそが
奮起しようと渇望するまで
廃墟に潜みもたれる熱帯夜を 人ってのがなんとなくスキっぽい
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水しぶきキラッ きみの手くびから跳ねる
ひこうき雲をみち連れに つかのまバカンス
はしゃぐ乾杯でこぼれる笑み ふたしずく
空いろビキニが新鮮な 波うちぎわに酔いしれる まき戻ってく情景
ゆかたに見とれつつ 指をからませ秘め事のにぎわい
ひまわり咲く丘のほとり 仲たがいとあふれる涙を ぬぐい去るミュージック
葉っぱのシャワーをあび 触れあう唇
いま海岸にたたずみ 黙りこむきみ
はるか沖へゆく船の積荷や いちめんに敷かれた星砂に なにを想う
さりげなくハグして しじまの暮れに寄り添い きみを温めたい
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叫ぶ事すらできなかった
とまどっては
吹き荒れる嵐やしおれる朝顔に
ずっと瞳をこらし立ちすくむよ
秘宝の眠る
ほら穴が崩落した石でふさがり
むりやり出口のわきに放ったら
右肩を痛め
腕が上げづらいなんて
ろうそくの灯し火みたいな
ぼんやり照らす
雲間を漂う頼りない月影なのに
おびえて足が震えるのは
どうしてだろう
割り切れなさを言葉にするのさえ
おっくうで
ふしぎと涙もこぼれなかった