詩人:理恵 | [投票][編集] |
嵐が来る
なのに雨はサーサーと降って
暗い夜を包み込む
心地よいほどのそれに
窓を開けて耳を澄ませた
夜の空気はゆるりと入り
換気扇から抜けていく
あと少し もう少し
長い夜を包んでくれたら
雨音は大きくなる
耳をつんざくようになったそれに
幻滅しながら
明日の朝にはきっと
嵐がやって来るだろう
H27.9.8
詩人:理恵 | [投票][編集] |
あなたに会いに行きました
古いアルバムの中
あなたは動きはしないけど
時間は確かに流れておりました
セピア色した記憶は
ほんの一時だけ色づいて
確かにそこにありました
閉じた茶色の表紙絵は
鮮明に今を映し出しました
またあなたに会いに行っても
良いでしょうか
と 見上げた空は
いつもより艶やかで
夏の終わりを告げています
H27.9.11
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優しくなれる気がした理由が
わかった気がしたよ
まだヘ音記号も知らなかった頃
見よう見まねで弾いた曲
大好きな漫画に
夢中だった小説に
流れていた音楽
初めて両手で弾けるようになった曲
幼い頃の私は憑依して
心の奥にしまったものをすべて引っ張り出してきてしまうようだ
だからあなたも
一緒に出てきてしまうのね
あなたの誕生日より
あなたの好きだったものを食べるときより
ずっと優しい気持ちで
あなたを思い出すよ
この曲を弾くとき
相変わらず拙いけれど
きっとどんな時より
緑の時間が流れてる
H27.9.17
詩人:理恵 | [投票][編集] |
いつか夢見たそれは
こんなにも難しかっただろうか
人差し指ひとつで
思いやりができると信じてた日
こんなに生きにくくなったのは
いつからだろうか
人はそれを
気持ちだけでは成し遂げられないと言い
技術だけでも成し遂げられないと言うけれど
気持ちより技術の方が勝っている気がして
結局能力の差だと、いじけたりする
追いつけないのは
努力が足りないから?
なにが足りないのか
努力も能力も
どっちもかもしれないけれど
今、一番欲しいのは
自身の力に相応なペースか
完全なる休息だろう
きっと、立派なオトナが聞けば
甘えだと言うだろう
そうだ、甘えだ
わかってる
わかってる
動けないんじゃなく
動かないんだ
けれど、もう、今の僕は
叱咤激励で奮い立たせれば動くという神話に
ついていけない
H27.9.24
詩人:理恵 | [投票][編集] |
今も、思い出すと
潰れそうなくらい締め付けられて
切ないとか 愛しいとか
そんな感情ではなくて
言葉にしてはいけない何かに
のみ込まれそうになる
いいの
あなたが決めた道だから
もう手をのばすことはしない
それでも時おり
思い出しては
苛まれて
救われていく
思い出すだけ
あなたのやさしさを
ことばを
ぬくもりを
どんなに求めていても
追いかけないから
そう
決めたの
H27.10.12
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君は一人じゃ弱いから
僕と一緒に行こうよ
そう言って差し出された手は
どこへ導こうとしているのか
教えてくれない
私みたいな人が
誰も信じられないこと
知ってるくせに
不安、だよ
君の個性だと言われても
あまりにもスペックの低すぎるこの身体に
理由がほしかっただけなのに
理由がないなら
同じようにこなすすべがほしかっただけなのに
僕の能力は
生きていくにはあまりにも乏しすぎるから
君に委ねて募る不安ならいらないよ
向かう場所は僕が決める
H27.10.25