詩人:理恵 | [投票][編集] |
夜の空気を吸いたくなって
窓を開けた
もんもんとこもる熱は
ひっそりとした風に支配されていく
わがままね
今度は寒いなんて
桜の蕾もふくらまないまま
気がついたら別れの季節
漂う幻想のような寂しさの向こうに
現実が口を開けて待っている
雪に足を取られて転べば
後ろから幻が手招きして
本音はきっと
夢を見ていたいんだ
ただ、頭だけが
未来を向いている
青い花に囲まれて
悲しみがすぐそこまで迫ってる
2018.1.13.Tue
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目覚めたら窓の外 白銀の街
暖かい電車の中 まだ夢の中みたい
現実味ないおとぎ話みたいな日々思い出してた
心地よい温度とリズムにもうすぐさよなら
ホームに降りたら 音のない世界さえ
自分の呼吸で霞んでく
真っ白なキャンバスに一つ二つ
つけた足跡は
あなたと違う方へと進み始めていた
2018.3.4
詩人:理恵 | [投票][編集] |
目の前はらりと木の葉が落ちた
この感覚はなんだろな
胸にぽつんと生まれた
しこりのような違和を感じる
鞄から小説を取り出して
読みながら歩く並木道
笑いながら真っ赤な色をした
ランドセルに追い抜かれてく
この感覚はなんだろな
僕はあの子を知っている
初めて見たあの子を知っている
あの無邪気な笑顔を知っている
また小説に目を落とし
並木道を進んでく
視界の端が眩しくて
顔を上げたらきらめく川面
ふわりと黒髪が揺れた
この感覚はなんだろな
今揺れたのは誰の黒髪
パタリと足元で音がした
手の中に小説はない
閉じたページを開こうと
伸ばした手に重なった
白くて細い真珠の手
この感覚はなんだろな
拾い上げて前を見た
目に映らない季節がよぎる
この感覚はなんだろな
とても大切な何かを
忘れてる気がする
H30.2.23.Fri
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暗い吹雪の向こうから
列車の明かりが近づいてくる
どこの雪国の景色だろうと苦笑して
開いた車両に乗り込んだ
窓は曇ったまま 街の灯りを曖昧にして
それでも降り続く雪は目に映る
髪から白い雫が落ち
ひやりと手の上を濡らしてく
さっきの苦笑が嘘のようだ
急に親しみを覚えてしまった
その冷たさに
その容赦のなさに
この窓の向こうは
私の心だ
十個の駅を通りすぎ
降り立ったホームには
サクリと足跡が記されていく
ああ、私の心だ
コートに手を突っ込んで
白い息を吐くような
冷たい冷たい心の中
君とは仲良くなれないが
恐らく君は私だ
悲しくなるこの気持ちすら
分かち合えるような冷たさに
ひとりぼっちの寂しさすら
体現した静けさに
ここは現か幻か
色のない世界は惑わせる
このままこの景色に浸かっていれば
すべて忘れてしまいそうだ
ただ、どうか
時間が止まればいいのに
そう願う自分がいる
H30.2.23.Fri
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破れた風船を繋ぎ合わせて
息を吹き込むような
そんな感じ
風船なら取り替えればいい
生き物ならどうすればいい?
引き裂く勇気はないから
ただただ息を吹き込み続けてる
H30.2.21
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手づくりのわたしはツギハギだらけ
ワンピースのボタンは一つだけ違う色
手づくりのわたしはツギハギだらけ
毛糸の頭はごわついたまま
手づくりのわたしはツギハギだらけ
靴はとうの昔にどこへやら
手づくりのわたしはツギハギだらけ
今も腕から中身が出てる
手づくりのわたしはツギハギだらけ
耳は糸一つで宙ぶらりん
手づくりのわたしはツギハギだらけ
身体は前方3センチ
手づくりのわたしはツギハギだらけ
忘れ去られた棚の下
片目の世界であなたを見てる
2018.1.31
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波は一切見ていない
それがどんな色だったのか
どれほどのたうち回っていたのかは
知らない
だけどすべてを飲み込んで
すべてを無にして
きっと私の背後にいたのだろう
ただ、逃げ惑う人々を追いかけた
振り向かなかった
ただ一人で、ただ逃げていた
が
たどり着いた先に、あなたたちを見た
「みんないる」
と、思った
これから何が起こるかわからないけれど
背中の惨状を乗り越えよと言うのなら
手を伸ばしてもいいだろか
君たちが
手を伸ばすべき相手だろうか
迷いながら
拳が震えるのを感じてる
2018.1.31
詩人:理恵 | [投票][編集] |
雪が溶けた
手のひらで
何もつかめない気がした
何も残らない気がした
踏みしめた足跡に
黒い粒が顔を出す
手は白い雪をかすめて
足は躓く石を見つけただけ
息を吐いたら
目の前はかすんで
かじかむ手を
暖める勇気もなくて
ただ、悲しくなった。
2018.1.23
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あの日の私が泣いている
お前も私を置いていくのかと
産まれたときから一緒だった
一心同体で過ごしてきた
ずっと、それが続くと思ってた
あなたはあたしを苦しめていたと言うのに
寂しいものだな
あなたを慰めながら
共に行けると思っていたのに
幼い記憶は一緒に行けないらしい
あなたは苦しい記憶の中で、苦しいまま
まるで、乗り込んだ列車が
勝手に動き出すように
ホームに残されたあなたと繋いだ手が
離れていくように
これが別れになるとは思わなかった
まだ、寂しいと思う気持ちが引き留めているけれど
きっとあたしはすぐにでも動き出せる
その準備はできている
あなたはあたしを恨むだろう
一緒だと思っていた二人は、一緒じゃなかった
ただ、一つ
あたしは名残惜しいよ
それでも首にかけた輪がちぎれたとき
この運命は約束されていたんだ
本当はあなたも連れていきたかったよ
でも
もうすぐ発車のベルが鳴る
2017.12.14
詩人:理恵 | [投票][編集] |
しんでしまえたらいいのに
このまますべて
こなごなになって
みんなころしてしまいたい
なかったことにしてしまいたい
かぜがなびくなら
ふりかえってけしさってしまいたい
かたちにならないことばを
あいしていた
ことばにならないかたちを
あいしていた
せかいのさいごのひに
きっとわたしはがれきにうもれて
しんでしまうような
へいぼんなひと
あのそらになにをみたかしら
おさないひになにをみたかしら
さとうでできたおんなのこが
こうちゃにとけてなくなってしまうように
かっぷをわったら
みずがはじけるように
みんななくしてしまいたい
こえにならないさけびを
だれもきかないで
2017.11.16