詩人:理恵 | [投票][編集] |
隣のばあやんちの庭で
一人咲いた花は寂しかろ
三年前まで暮らしてた
ポチの埋まる木の下で
一人咲いた花は寂しかろ
黒い人の涙の跡が
ぽつぽつついた庭先で
じいやはぼうっと空見てた
隣のばあやんちの庭で
咲いた花は知ってるだろか
もうここには誰も来ないこと
黒い人が去ってから
空が高くなった頃
じいやは遠くへ行ってしまった
隣のばあやんちの庭で
一人咲いた花は寂しかろ
今日もひゅるりと吹く風に
一人首を振っている
2017.10.21
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彼は筆を止めた
見上げた塀の上には猫が一匹
つまらなそうに歩いてる
彼はうつつに夢を見て
描き続ける意味を考えた
全てが彼次第の世界で
勇者は勇敢に戦った
手にした秘宝は勇者の願いを叶えて
砕け散った
破片は砂に埋もれたまま
数百年が経って
もう、その存在すら誰も知らない
物語の終わりに
勇者の笑顔すらなくて
誰も見向きもしないまま
日常は流れてく
H28.1.6
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トッコンカラリ、トッコンカラリ
つむいでいくの、ひとつひとつ
トッコンカラリ、トッコンカラリ
いち、にの、さん、し、
トッコンカラリ、トッコンカラリ
ひとつがふたつの四角い井形
トッコンカラリ、トッコンカラリ
これはあなたで、これがあのひと
全部つむいでわたしになる。
2017.9.21
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今も聞こえるでしょうか
あなたと出会った暑い日が
最後にあなたは
あの日をはっきりと覚えていると
言ったけど
あなたと別れて時が経ち
私は忘れそうです
こんなふうに
人は老いてゆくのでしょうか
あなたの愛犬の誕生日も
忘れてしまいました
ただ、最後に
白い部屋に舞うであろうあなたの影を
見ることは叶わぬと
離した手
あなたは今も
そこにいますか?
頭の片隅で凛として
時々、ふわりと舞い降りる
今も、その鼓動を
感じていますか?
私はもう一度
あなたに会いたい。
2017.8.15.Tue
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過去を思い出すと、
時々死んでしまえたらいいのに、
と思う。
嫌だったことを思い出すと
この身が砕けても無惨でも
全てがなくなればいいのに、
と思う。
あの人を思い出すと
桜の花びらに埋もれるように
深い海の底に沈むように
悲しみと安心に襲われる。
この違いはなんだろう。
2017.8.15.Tue
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時には冷やかされて
時には嫌がらせされて
僕には、素直に愛せなかった
そんな時を経て
僕はまた、君と出会った
今は、冷やかす人も
嫌がらせする人もいない中で
時々、悲しかったことを思い出すけれど
また、隣にいてもいいですか?
親愛なる君へ
2017.8.5.Sun
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大したことないなんて
謙遜したふりして
愛のことばをかけてあげられない
褒められたなら
いい作品なのだろう、なんて
褒められたから
愛そうなんて
ごめんね
私の子どもたちは
深く傷つき
疑心にあふれる
思ってるだけじゃ
伝わらないんだよ
ごめんね
もっと愛したい
もっと愛そう
やっと
そう思えるようになったの
H28.6.4
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疲れた身体が目覚めると
窓は漆黒の闇
雨の叩く音だけが
辺りを包み込んでいて
熱いシャワーを浴びながら
あと二時間だけ眠ることを考える
髪からしたたる雫を拭い
コップ1杯の水を飲む
巡る水はすっと身体を重くして
眠りへと私を誘うけど
熱い風を髪に当てながら
ふと川辺の桜を思う
今年もそんな季節が咲いていた
儚く咲き散りゆく姿に
何人もの芸術家がそれを唄い
その下で陽気な人が酒を飲む
染みゆく水を感じつつ
また一つ季節が終わったと
ふっと悟った午前二時
H29.4.9
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帰ってきてから気づいたの
もう、あなたはいないんだって
おいしい料理
作ろうと思って材料も買ってきたのに
疲れるよ……それでも
あなたに会いに
もう一度、この部屋を出ていくの
買いにいってきます
サラダ油
H29.2.19
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通り雨の降った日に
あなたはぽつりと呟いた
もうこれで終わりだね
って
私はただ、俯いていた
何がそうさせたのかは知らないの
桜の散る春の日から
雪の積もる一昨日まで
気がついたらなくなっていた
私は手のひらに
リップのかけらを握りしめながら
この紅も
あなたのために選んだのに
って 涙を
こらえた
最後に キスして
そんな願いも言えぬまま
あなたは 雨と共に
去っていった
〜Goose house『L.I.P's』を聞いて〜
H29.1.22