詩人:是清。 | [投票][編集] |
誰が死ぬのだ。
誰が死んだのだ。
誰が生きるのだ。
誰が生まれたのだ。
憎悪遺恨愛情利用渦巻く昨今、誰が生き誰が死んだか誰か把握してゐるか。
誰が誰でお前はお前だと誰が認識してゐるか。
お前はお前の猿より少ない脳味噌を活用してゐるか。
誰の手だ。
誰の足が彷徨つてゐるのだ。
誰の脳だ。
誰が其の強風に吹き飛びさうな頭を支えてゐるのだ。
誰が逐一情報を脳に伝えてゐるのだ。
どのやうな力の働き掛けに依て心臓からお前の體に血液が送り出されてゐるのだ。
醒める事の無い夢に誰が区切りを付けるのか。
お前の疑問に答えを出すのは誰だ。
お前の打ち出した解答に正否の判断を下すのは誰だ。
お前はお前の存在理由を此処に示せるか。
示せるか?
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今はまう腐敗してしまつた静かな静かな森の中
踊つて・彷徨つて・笑つてゐた二人
誰も見咎める事の無い深い深い深い森の中
あの頃の僕と今は居ない君が、
立ち止まる僕を嗤つてゐる
足元から崩れ落ちていく感覚
君を呼んだよ/喚んだよ?
頼りないあの日の青/青さ
「抜け落ちさうな紺碧の御空」
「解けて融けて・あの海に零れ落ちさうね」
君は笑つて・笑つて・嗤つて
あの不自由な空に融けてしまつた。
曇つて霞んだ灰褐色の御空
誰が濁したの?誰が壊したの?
まう二度と戻らないゆめ
流離ひ君を思ひ出すから
穢れ無い君の儘
君の姿はあの森と海にたゆたつてゐる
浮かんでゐる
溶け切つた體は其のすべてになる。
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騙されてばかり/愛されて罷り
借り物の恋人と仮初めの約束をして
嘘だらけの海に溺れるのです。
降頻る街の涙の中/赦されぬ行為に模索する
蔦の這った建物から/砂の預金を引き出し
狭く飢えた街中から/愛の指紋を排徐する
騙されてばかり/愛されて罷り
借り物の恋人と仮初めの約束をして
嘘だらけの海に、
何かを見付けたいのです。
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求めて求めて欲する心
渇き渇き罅割れる心
今わたしの心を
言葉と謂ふ開胸器で開いたら
真赤な傷口晒す愚かさ
溢れ出して貴方とわたしを埋めるのかもね
悲惨な絶命カアチエイス興ずる気持ち心持
貴方には屹度
悲惨な絶命カアチエイス
其の意識すら無いのだらうね
渇き渇き潤す為に求めてもより一層
渇いて、罅割れて
待ち草臥れて伸ばした手を今
こころの内側に折り曲げて諦める事を考慮したよ
内側で独りと謂ふ温度に凍え震えるわたしは
虚勢を張つて未だ笑む事の出来る私とは決定的に違ふ
然し今其のどちらもが
貴方を必要とし、求め渇いていく。
強く握つて痕の付いた不器用な指と此の手
躊躇ふ弱い足逃げ腰
貴方に未だ
愛されぬ此の罅割れたこころ。
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何で君を求めたのだらうね。
だうして君であつたのだらうね。
一体幾つの僕が君を求めたのだらうね。
沢山の僕と謂ふ欲其の中の幾つが僕と謂ふ意識を持つて君を求めたのだらうね赦しを乞ひ何度でも其の足元に膝を付くけれど何故君の手は振り上げられないのだらうね哀しい顔をして眼をして手をしてまるで君が慰められたがつて/欲しがつてゐるかのやうで僕は今、
君を欲しがる気持ちは此処にずつと息を潜めてゐただからずつと君もずつと求めるこころを隠してきたのだらう哀しくて寂しくて何かずつと足りない儘僕等は手を繋げずに居た簡単な切掛けで今僕は/僕は/僕等は、
一体幾つの僕が君を知らずに居たのだらうね。
一体如何して僕は、
如何して僕の/君の
求めるこころは充たされぬ儘なのだらう。
其れを知らずにゐた頃よりずつと
距離は近い筈なのに、
此の求めるこころは君以外在り得ない
他の一切を拒絶した閉ぢたこころで良い、
渇いた儘で良い、
此の求めるこころは君以外有り得ない。
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壊れさうな、
壊されさうな明日は又虚勢を張つて微笑む
何段か昇つた階段の途中で
今現在の僕と過去のぼくは立ち止まり
何も生み出さない昨日と謂ふあしたに留まり続ける
計り知れない過去と現在と謂ふ連なつた遺伝子の崩れ落ちる音がする
誰も認める事の無かつた昨日何にも動かされる事の無かつた今日に穿つ楔
壊される事を望んでゐた今日を記憶の絶壁から突き落として明日への再生を図る
やさしすぎるうたに進まぬこころ。
甘やかしてばかりの自身、入水。
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誰も居ない家の
誰も居ない部屋で
誰も居ない町の
誰も居ない酒場で
誰も居ない世界の
誰も居ない家で
やつと僕にも解つたよと何時か嘲笑つた感情に今苦しむ君に苦しめられてる誰も隣に居ない事より隣のひとが遠い事が何より辛い確かめられないことが辛い
繰り返さう 安つぽい文字の羅列
まさか僕が嘲笑つてゐた僕が今
君が居ない家の
君が居ない部屋で
君が居ない町の
君が居ない酒場で
君が居ない世界の
君が居ない家で
苦しい苦しい切ない辛いとのた打ち回つても君は遠い遥か遠く空の下途切れる報せが僕の寂しい寂しいこころに黒雲を齎す未だ晴れぬ薄曇
君が居ない家の
君が居ない部屋で
君が居ない町の
君が居ない酒場で
君が居ない世界の、
意味が無い世界で。
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灰褐色で塗れたからだ
濯がう、濯いで消さう
援けを求める卑しいこころ
濯がう、濯いで魅せやう
駄目だよ昨日曲がつた道
又今日も手招きしてゐる
素敵だね整つた路
渇き切つて罅割れた模様、奇麗
誰もが満ち足りてゐるなら
此処に川等出来ないさ
誰も躓かなかつたら
此処に橋等出来ないさ
橙色の穏やかな町に帰り着きたい
橙色の穏やかな町に君が帰り着けますやうに。
欲求と理性のあいだで君が溺れてしまわぬやうに。
哀しみと悦びの間で君が擦り切れてしまわぬやうに。
すべての白と黒の、
先へ向ふ幾つもの橋で、
君が立ち竦まぬやうに。
きみはわたる、
あすといふなのはしを
ぼくはただみてゐる、
きみがわたりきるのを。
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誰かが殺めた昨日の屍骸を棄てに来る。
大切にされるべき過去の残骸を、
粉砕しに来る人がゐる。
味気無い朝。
「腐り始めた其れを朝食にして嘲笑つて今日の糧として明日へ跳躍しやうではないか煩がつた先日のカア・ステレオ今古いレコウド走る線路に生る」
責められる事等無い
赦される事は無い
誰もが膝を抱えて僕を睨む
明日と謂ふ胎児を抱えた僕を
「浪費し過ぎたお前と謂ふ人格を何度殺してきたのだ今日と謂ふ限られた時間でお前に何が成せるのだ哀しいか、恐いか、逃げ出したいか然しお前に逃げ出せる足は無い」
深い深い穴を覗き込んだら唯ひたすらに昏い穴
そして幾千もの
蜘蛛の糸蜘蛛の糸蜘蛛の意図
出入口に掛り手招きしてゐる
すべての朝と謂ふ朝を棄てに来る穴
棄てに来るひと
すべての夜と謂ふ夜に開く穴
すべての過去と謂ふ過去を棄てる穴
すべての明日を放棄する墓場
手招きしてゐる、
蜘蛛の糸蜘蛛の糸蜘蛛の意図。
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手を伸ばす。
此の手を伸ばす。
此の穢れた手を伸ばす。
此の穢れたひかりに満ちた手を伸ばす。
此の穢れたひかりに満ちた手を其処へ伸ばす。
其れは汚濁した只の感情の川で在つたり苦し紛れに吐いたあの日の嘘かも知れない悲しい寂しい弱いヒトの群れは案外に近い場所で息を潜めて居るのかも知れない息を潜めて居るのかも知れないね
恥ずかしいと君は云つたけれど一体何を間違えてしまつたのか君は考えもしないのだね哀しいと君は云ふけれど何が君を淋しくさせてゐるか君は思い付かないのだね
「誰も視た事の無い誰も居ない国皆優しくて皆傍に居る皆寂しくないでせう皆愛し愛されてゐるでせう。」
僕の手は仕合せを語る偽善者な君に翳される君は俯くすべての仮面を剥いだ弱者の君こそ真実美しいすがた
突き落して貶めて其の深い愛を手に入れる、赦して。