詩人:是清。 | [投票][編集] |
だうして其のやうに
夢のやうな容貌をしてゐらつしやるのでせうか
私の愛しいひと。
貴方を囲むモノに因り
不純で在り
其れでゐて唯一純粋で在り続ける君
「永遠なれ」
朽ちる事の無い永劫の地獄に
墜として此の身を焼き焦がす迄
揺るぎない存在で在る貴方は
何時でも私の目と手の届かぬ遠い場所にて
意地を張り自身を守らうとする
しかし私が其処にゐたら
君は如何やうな顔をするであらう
君は変幻自在の不思議
決して捕まる事の無い
陽炎に似た浮遊する物体
君は縛る事の出来ない柔らかな生きもの。
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適度に熟した妾の果肉/貴方の肩に預けた/妾の一部/腐つて根を張る此の足/汚れた赤い此の手/許容範囲の狭い精神・此等が妾を形作るモノです/貴方の長い手足/其の仕草/掠れた低い声/総ての言動/単に脳の機能では無く/全ての組織に組み込まれた貴方と云ふ男・切ないと謂ふ感情に未だ出逢つた事が御座居ませぬ/幾度考えても辿り着く此処が/妾と謂ふちつぽけな存在の在処で或ると思つてゐます/思ひ上がるなと叱つて頂いて構ひませぬ/其の温度の低い素振りとは裏腹に/貴方の其の胸は内側からの熱を含むで/確かに暖かいのです。
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囲はれた柵の内側
無理矢理に探せば
四ツ葉位出て来るかもしれないさ
其れは欺瞞に満ちて
幾らか歪んでゐるだらうけど
妾は此の灰色の町で
何をする事が出来るのだらう
何を成し得たのだらう
がむしやらに走つて来た
其れが妾の生き方だから
呼吸も辛くなつて来た
始めから息何てしてゐなかつたから
まうだうしやうも無い
拾数年生きて来てしまつた
だから何が出来る?/何を知る?
水銀で満たされたプールで
妾は今でも(夢/理想)を見てゐる
安穏とした日常を漂ふ夢
規律に支配された美しい配列
其れこそが妾の理想
「叶ひますやうに」
未だ走るよ。
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うだるやうな熱の波の中で/壊れさうに息を吐く/拐はれさうになる遠い意識の中で/何度貴方と出逢つたでせう/喜ばれさうな仕草繰り返す度/虚しくなるのは何故?/花開き又閉ぢて/幾度でも繰り返す/重ねて彼の影と/何処が違ふのか/今見極めて/貴方の傍に寄り添ひ/全て曝して魅せるから/ねえ今/現在/総て証してよ/妾の全細胞が衰え/醜く朽ちる前に。
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全部塗り潰す
モツズブラツクな御空
妾の部屋の黒電話
今でも
嗚呼未だに
鳴る事無い機械音に
怯えてゐるの
怖くは無い
きつと云へるわ
一夜限りの事だと
其れ位の想いだと
だうして二度と来ない感傷に
全て預けてしまつたの
後悔何て役にも立たない
いづれにしてもまう遅い
無様に追ひ縋りたくは無い
明日も多分降るわ、
妾の涙に相乗して流れる雨
追ひ慕ふ此の邪魔な心取り去つて。
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妾はみつとも無い/水兵のやうな制服を着て/宜しく無い指を立て/現在此の時を驀進し続ける/理由何て無い/強いて云へばさうね/妾が女の子だからかしら/本当に驚いたのよ/妾確かに/四年前迄男の子だつたの/変な話ぢや無くてね/albumにも載つてゐるわ/丸で違ふ顔をした/別人が笑つてゐるのよ・随分汚れたわ、妾/彼の頃は/只強く成りたいと思つてゐたから/でも其れで良かつたのかしら/多分良かつたのよ/だつて現在貴方を支える事が出来る・夏が来るわ/妾は此の窮屈な衣を脱ぎ捨てて/夏仕様の妾で迎へに行くの/待つてゐてね/青過ぎる御空で。
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気紛れにやつて来た
目の前が眩む強い炎天下
髪洗ふ/艶やかな野茨
柔らかな紫陽花
妾慰めない
花冷えの頃に聞いた
噂では心許無くて
丸で足を上げる理由にならない
「何処にゐるの」
現在は未だ皐月闇
明ける事の無い青嵐
「傍にゐて」
まう二度と云はない
諦め掛けてゐた
慌て気味の涙は
夕暮色に染まる白雨
肩を抱く/陽炎のやうな腕は
温かく/不確かで怖い
「何処にゐるの」
染みは現在広がり雲の峰
腐る事の無い早苗月
「愛してゐる」
まう云はない
「此処にゐるの」
君は現在水馬
溶ける事の無い/隔たり
「愛してゐる」
まう聞けない。
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貴方の/煙草の匂ひ/寝台に染み付いてゐる/ずつと前から長い事/ずつと思つてゐた事/今此処で云つてあげる/貴方は何時も独り善がりで/妾の事なむか是つぽつちも考えちやゐないのね/貴方は遠く/空のうえ/何を思つてゐるの?/見当も付かない/遥か遠く・鮮やかな軌跡だけ残して/全て奪つて去つて行く/素晴らしい手際ね/まう惚れ惚れ/何も手に付きはしないわ・何を聞いて/何を視て/何をしたら貴方は喜ぶの?/例へばクラシツク/或いはジヤズ/其れとも柔かいベツド?/全然解らないわ/如何謂ふ公式を使用つたら/貴方の全てを把握出来るの?
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僕等は未だ幼く
其れでゐて大人に成らうと背伸びをして
枯れてゐた偽物の草木に
水を遣る事に夢中になつた
愛何て前時代的な言葉をさ
受け流して
彼の大人達のやうに
誰も気付かぬ振りをすれば良いのだらう?
僕等は未だ熟さず
子供でゐる事にしがみ付いてゐて
壊れてゐた虚像の建物に
失つた楽園を重ねてゐた
奪はれた全ては
全部君の罪で
下された罰を
僕等は喜んで受けやう
意味も知らない言葉を
僕等は易く口にする
其の全部が君の為で
贖ふべき事等此処には無い
さうだらう?
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疑ひ匂ふ彼の目
不純たる妾の全ては
純然たる行為に注がれ
不可思議な夢の果てに
ひとつの確信を得る
不愉快な爪の跡に
ふたつの意識が重なる
幾度もの逢瀬と破壊は
有り難くも無い雨を降らせる
恋人は俯く
彼の線路は繋ぐ
酔ひ痴れて失ふ
其の儘消える
「まう旅立たない」
小さな声で紡ぎだす狂奏曲
今は眠つてゐたいの
流れ着く迄
恐がる事の無い明日へと。