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ライカの部屋


[45] 曇天
詩人:ライカ [投票][編集]

窓の外の景色
重々しく広がった厚い雲に 押しつぶされそうで
息苦しくなって
鈍色の渇いた路面の上に滑り出た

秋の今日という日は
思いの外 哀しみ色に満ちていて

黄金色が豊潤の名の下にそよいでいた田圃は
無惨にも刈り取られ吊された か細い躰で溢れ
黄金色も褪せた死骸と
青臭い血の香りで満たされていた

道の脇に居並ぶ鉄塔は
何事も主張することなく
孤独に間隔をあけ
数km分決して歩み寄ることなく
きちりと並び
その短くも絶対の孤独に耐え
佇んでいた

くの字に腰を曲げた老婆は
重い重い荷物を抱え
果て無きように見える
果て有る道を歩んでゆく
我が荷物を見やり
いかに身軽かを思い知るけれど
交換することはできない
彼女は 増えすぎた荷物を手離すことはできない
懸命に歩くだけ
真直ぐな道を
ただ 歩くだけ


死灰の気配漂う今日は
ばら色に その頬を染めることなく
暮れてゆく

その隙間なく広がる曇天に
救いを見いだすことは
できなかった

ただの
一筋も



2005/10/12 (Wed)

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