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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1071] 帰りの電車内にて
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


どんよりとした空模様
不安が襲う
吹き込む風はつめたく頬を冷やす
疲れたように鞄を抱えうなだれる
背中を丸めて眠り込む僕
窓の外
過ぎ去る景色
遠く揺れるネオン
雨が窓に降りかかる
音もなく静かに
黙り込んだ車内
人々は夢の中で
ただ時折アナウンスが聞こえるくらい
やがて
誰もがそれぞれの居場所へと帰っていく
疲れた顔をして
黙り込みながらただ家路を行く

遠く点滅する信号機
渡りそびれた学生
再び走り出す電車
聞こえたのは低い声

『次は、終点…終点……』
遠ざかるアナウンス
誰かが忘れた傘
悲しく立て掛けられてある
開いたドア
振り返ると
やがて
閉じていく
再び走り出す電車
人々はおりて
無人になる電車
車庫へと向かい
雨粒を弾きながら
走り出す電車
見送る僕は
いつの間にか
独り取り残されて
重い足取り
改札口へ通じる階段をゆっくりのぼる。

2007/05/07 (Mon)

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