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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1182] 愛の唄
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][得票][編集]

おやすみなさい…
そんな言葉、言わないでさびしいよ
でも君がいつもの笑顔で言うから
安心しきった僕は夢の中
でもほんとは眠らないでさ
ずっと君の話を聞いていたかったよ

夜がきてしまうことをおびえていたのさ
暗闇の中はやっぱりこわいから
夢の中でも気づけば君の姿をさがしていたよ
いつだったろう、暖かな春の風の中
いつか君が誓ってくれた二人の約束
夕暮れの空の下
声を風がさらって記憶の画面にノイズがかかる
思い出せそうなのに思い出せない
帰り際交わした
もう一つの約束

君の痛みが僕の痛みになったのはいつからだろう
時々淋しげな表情(かお)をして
僕の方に向き直って笑ったけれど
『僕も君もお互いにいろいろな悩みを抱えているんだ』
ぐらいにしか思わなかったけど…

あの日の夜三回目のデート、なにも言わず抱きしめたら
君は泣きながら
陰りを脱ぎ捨てて
僕の名前を何度も呼んで抱きしめ返した
あの冬の夜の物語

唄うように僕らは声を合わせて空に言ったよ
『愛してる』
白い雪が舞うきれいな景色の中
二人は忘れられないほどのキスを交わした
星が流れるイブの夜に

もう僕はおびえないよ
もう僕はこわがらないよ 君がいるから
君がくれるつよさとやさしさが奏でるこの世界にひとつの愛の唄。

2007/06/11 (Mon)

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