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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1241] 地に墜ちる翼
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


遠ざかっていくぼやけた記憶の彼方に光るもの
僕がずっと追い求めていたものと同じ光
つかみ損ねた悲しき夢の残骸
日々増え続ける苛立ちと不安
積み重なっては簡単に崩れてしまうから
時々適当に済まし
投げやりな態度で負け惜しみながら放り出す
本当はわかっていたんだ
どうにもならない事がある位

真っ白い翼を伏せた天使は僕のそばで泣いていた
ふるえる身体はとても冷たく
僕の哀しみなんかと比べられもしないくらい
君の哀しみは深く
そして何よりも癒せる術さえ知らない僕は
ただただなだめるだけの役立たずだった
今もしも君の哀しみを全て取り除ける言葉があるなら
教えてほしい
たとえこの心を悪魔に売り渡しても
こんなちっぽけ命で君が救われるなら
僕はなんにだってなれるさ

それでも僕は何もできやしなかった
ただそばで元気づけるだけで
ただひとつさえしてやることはみつからなかった
ただそばにいるだけしかなかった

また前のように羽ばたけるのはいつの日か
翼は飾りでしかなくなったのに
君はどうしてこんなにも無力な僕を許してくれるというのか
涙が止まらなくあふれて
僕は罪の形を一枚の紙に象った
暗い陰だけを残し僕の中だけで滅びゆく世界
君の傷みはきっとこんなものじゃないだろう
そして僕は君にできなかった事の全ての罪を背負ったまま
君が許してくれても自分を許せずに
生きていくのだろう
歩いていくのだろう
ずっと。

2007/07/08 (Sun)

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