詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
もしもさ
僕が人間じゃなくなにか別の生き物だったなら
きっと今なんて比べものにもならないくらい必死になって毎日を生きていただろう
そう、たとえば蝉だとしたならば
その短い生涯の中でなにを想い鳴き、なにを胸に鳴き終えるのだろう
きっとその答は蝉にしかわからず、私などでは到底理解することなどできないだろう
夏の間中鳴き続ける蝉は
なにを訴えているのかそれすら私にはわからない
魚も鳥も虫だって
きっと人間の私には聞こえないだけで
そのそれぞれの持つ生涯を必死に鳴いたり泳いだり飛んだりすることで何かを見いだそうとしているのかもしれない
だから、私は私
私以外の何者でもなく私は私でただの私
鳥にもなれなく
魚にも虫にもなれない
人として生き人としてこれからも生き続け
そして人として死んでいく
だから、私は私のできることをさがしながら今も一本の同じ道を歩いている
この先もずっと歩いていく
私は私で君は君
それぞれがそれぞれに違った光り方をする光を持ちながら
一人一人が違った生活を営み、違った生涯を送っていく
だから、私は私
それだけの存在
君も同じなはず
されど、この世界にたったひとりの特別な存在でもある
だから、私は私で君は君
それ以外の何者でもない
それは命が尽きた後でも変わらない永遠不変の真実
魚も鳥も虫も
すべてが同じように限りある時間の中で自分という存在の証をさがしている
それだけは私が知ることのできるこの世での唯一の確かな事。
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