詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
思い出の足跡を一つ一つたどりながら数えていた
涙こらえ笑顔を隠し
本気で泣けず本気で笑うこともなくて
ただ他人の話に合わせて
流れてゆく時のだるさに深く溜息をこぼしてはどうしようもないほろ苦さに胸を焦がしていた
帰りたい場所はあるのだろうか?
そもそも帰れる場所なんてあるのか?
暖かく迎え入れるようなやさしい思い出じゃないから
時々無意識に浮かんできたりするときはとっさに別のことを考える
ああ、
瞼閉じて 世界を見上げよう
いつまでもいつまでも
変わることのないように
ボクらふたりが愛し合った記憶は心にずっと残るから
色あせて薄れてしまわないように
しっかりと今もう一度刻みつけよう
今日という場所に
明日も明後日も
ずっと
刻みつけるんだ
記憶という記録を
どんな思い出だとしても思い出は思い出
だから
刻みつけるんだ
深く 深く 深く
消えないように
刻み込むんだ
今日という場所に
茜色の空が夜に包まれてしまう前に
踏切の遮断機があなたとの世界をも遮断してしまわぬように
いつでも歩く歩幅は同じ歩調同じリズムで
走るときに限っても同じ歩調同じリズムで
ふたりでこの長い道を歩いてゆく
肌寒い季節も手袋を脱いで手をつなぎ
温もりを直に確かめ合う
夕闇迫る帰り道
そして別れていく
時にはさよなら、と
強がりながらもさみしくて
それでもつぶやくよ
今日という場所にはとどまれないから
明日という場所でまたあなたと巡り会い
昨日のようにくだらないことを話題に言い合いながら笑いあう
ずっと
今日という場所が在る限り
帰れる場所がある限り
何度だっておはようさよならを繰り返すさ
今日という場所が在る限り
僕はバイバイまた明日で
今日という居場所の中で
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