詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
うすらトンカチでばかでなんの取り柄もなくて
何かあるとすぐに涙がただ流れてあふれてしまう
他人に同情して涙もろい僕は仕方もないくらい泣き出してしまうんだ
始末のつけようがない僕なのに君は他人のために涙を流せることなんてしようと思ってもなかなか出来ることじゃないし
それはきっと心がやさしいからこそなんじゃないって
言ってくれた
いまでも覚えている 記憶の中に鮮やかに残っているよ
紡ぎだしていこう
涙をむりやりに戻すことはないさ
泣きたいなら目いっぱい泣けばいい
そう君は言った後にいつもあの笑顔で僕を見つめやさしく微笑むまだ心に残っているあの笑顔…いつの間にか僕の記憶から遠ざかり色あせてしわしわの押し花みたいに記憶から古くなってあろうことかだんだん時が経るごとに忘れ去られつつあることに気がついて悲しくなった 騒がしさが遠ざかった後に残るのは物寂しい静寂だけなんだと僕は知った 記憶の中をにぎわすあの微笑みやたくさんの君の表情が消えていく 記憶とは忘れられるためにもちろんないけどどうしてもぼくらの記憶は曖昧だから忘れてしまうのもまた事実さ だから薄くぼやけた視界の向こう いまはそれだけしか見えずそれが精いっぱい それだけでも目いっぱいで限界なんだ 悲しくなっても仕方ない それが記憶の足取りの速さ 時の流れの切なくてはかないところさと改めて知ったのは見るも無惨な虚無と悲壮感に満たされた世界 記憶の流れ着く岸辺波立つ景色…こここそがもう遂に終着駅なんだなそのあまりのさびしさにさいなまれた心は過ぎ去った過去にある置いてきたままの記憶の行方をまだ探す 意味のないこととは知りながらも探す健気さやいじらしさにはじめて自分で自分が愛おしく感じ思えたんだ だけど少しその姿は哀れなほど傍から見てても悲しげでましてや自分のことだからうちから見てもやはり悲しいがだからこそ何も言えない。
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