詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
私の扉を押した誰かがまた私の扉を引いて出て行く 泣いたり笑ったりブツクサ言ったりしながら
そうして誰かがまた私の扉を開ける
扉はかならずしも引き戸とは限らないから押し戸の場合もある
私の扉はひとつしかないけれどその扉の行き先は扉の数とは反してひとつじゃなくたくさんあるから
たどり着く場所は様々だからそれぞれ思うことが違う
だから開いてみて思ったことも見たことも違うから見えた景色により意見も変わってくる
私の世界を気に入ってくれる人もいるしそうじゃない人だってもちろんいる
考え方が違うから異なる見た世界という景色の違いでその評価も変わるから決して完ぺきにはならない
たったひとりが認めないだけでそれは完ぺきではなくなるしたとえ百人の人がそれがいいと思っても百人中半分の人は考え方の違いからほかがいいというに違いない または同じ人の中にあるものでも違うものがいいと言い出すからそのいい悪いの言い合いは終わらないしこれからも私の扉を開けるたび続くだろう
なんだろうと小さな興味本位を抱き開いてくれる人がいる限り
仕方ないと開けずに閉めた想像の扉があったという記憶だけ心に刻まれていて
そしてはじけて飛び散って行くその記憶だけは消えない
いつまでも心の中に刻まれた記憶を巻き戻して最初からまた見るように繰り返し続いていく無限組成世界の中で
認めたり認めなかったりしながら時には他人と時には自分同士の評価や価値観をぶつけ合って闘わせながら形のない思いを熱苦しく語る
他人の私生活をのぞき見たいと思うように隠した秘密は自分にもあるから自分にもわからないものもある 秘密はいつだっていつの時代でも見えないものだけどそれでもなんとかして見ようと思うのはきっと見えないままではこわいから
開けた扉の先に答があるようにいつでも光があるようにと願いつかんだ新しい想像の扉のノブに力をこめた。
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