詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
通り過ぎてゆく
僕のすぐ目の前を
いくつもの時間が流れてく 波のように波立って揺れるよ
ふと昔に思いを馳せて振り返っても
そこにはなにもなくただ薄暗いぼやけた影があるだけさ
目を閉じてみてもなにも見えないんだ
アルバムに残した写真じゃ
ビデオカメラで録画したデジタルの思い出ではおさまりきらないその時の輝きがあるんだ
この目でビデオカメラや写真ではとても見られない
鮮やかな本当の思い出の景色をあの日見ていたんだ
もう過ぎた遠い日のことを思い出すたびそれはかえらないけど胸の中で風みたいに小さく笑うのさ
あの日の僕はそこにちゃんと生きていたんだね
そんなことさえももう確かめることはできやしないけど
いつか消える命でも しっかり最後の最後まで生きていきたい
消えない証を1分1秒前でさえ忘れないように心のキャンバスに刻みつけて
永遠になる日々を描こう
今からでもおそくはないさ
もう戻らない道を歩いて
立ち止まる背中に時おり吹く風
それはまるで夢みたいに僕の頬から少しずつ消え失せて 僕の居なくなったあとの世界にまた新しい風が吹くさ
僕の中に広がる空を茜色に染めるから
涙を一滴たらせば波紋が生まれその波紋の先に見えるのは幾重にも連なる明日という重々しい枷
それもいつかきっと力に変わる
つよさという力に変わるさ
足下を見下ろせば
視線をおとせば
月明かりの中に
僕の命の影がぽつり僕のまねをひたすらする
その影がある限り僕は明日を目指し生きているのだろう
どんなに悲しいことがあったって文句やグチを言いながらもけっきょくは喜びでまた心を清め一時的な癒しだけでまた笑える
僕はおかしいんだろうか
こんなにも傷ついてるのになぜかいなくなりたいとまでは思わないから不思議さ
こうしてまた一つ命の影は薄れて僕から遠ざかりながら揺れる。
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