詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
僕のほんとの名前を知ってるというなら今すぐ教えてよ
僕の名前はつけられなかったから自分でつけるしかなかった
いつか名前さえ知らないまま死にたくはない
名前も知らなければ生きてこれからを暮らしてく意味もないから消えてしまうんじゃないかな
そんな不安も迫る
名前を持たない人はいちゃいけないのかな
呼び名もあだ名も付けられないね
僕はいつもひとりぼっち
名無しの人
みんなはどうして名前があるのかな
それだけで僕は幸せ感じれるのに
親から捨てられたあの娘は幸せもなにもわからなくなってる
信じることも出来なくなった人
僕より何倍も悲しい そんな人
影はゆらゆらり
僕の足下を揺れている僕のまねをする
ちょっとした施設の小さな庭の隅の桜の木の下の錆びかけた古いブランコが悲しい音を立てて響くよ キーキーと
迎えにもこない
夕暮れはさみしい
託児所で寝て起きる
晩ご飯は
先生はいつも僕を君と呼んでた
名もないから
でもある時先生はそれじゃさびしいだろうからとみんなに掛け合って名前を決めてくれた
すてきな名前を
ほんと嬉しかった
名付け親は先生だ
心臓が飛び出して来ちゃうほど
夕暮れがきれいだからじゃないけど涙がとまらない
変わらない幸せの中でお母さんやお父さんと呼べなくても
呼ぶ人がいなくても先生は代わりになるとほほえんだ
精いっぱいほほえんだ
目尻に涙をたくわえて
僕の名前をつけた人は僕を抱きしめて
少し見上げた瞳の中で輝いてたから神様に見えた 神様に見えた
大人になった今もおぼえてる
でも先生は今はいない
代わりに愛するあなたがいる
私を今までで二番目に愛してくれた二人目の人
ためらわず愛をくれた
先生とほんとは愛を分かちあいたかったけどあの日の私は小さすぎた 時が私を大人に変えて先生を私から奪ったんだ。
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