詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
生まれ育ったこの街をあいさつもそこそこ
今夜出ていく
満月が僕の瞳の中ただよっている
愛という翼を大きくひろげて
振りかえらない
良い思い出のないこの街になんてもう用はない
君がある日ある時ある朝うたってた歌が妙に心にやさしく流れていた
そんな記憶すらも
僕はイヤな思い出と一緒に葬ってしまうのか
まだ決まらない行き先
さてどこへ行こうか
これからの僕の未来はどこへ行くのかな
自分でもわからない
切符売り場でウロウロ
選べなくて いくつの電車を今まで見送っただろうか
あなたのやさしさや恩を仇で返すような今日はもう明日のことでいっぱいいっぱい
さしこんだ月明かりがとても綺麗で
君にも見せてやりたいよ
もし君が生きていたなら
瞳をただよい流れる月日
悲しい思い出ができちまったこの街はもはや居場所じゃないな
思い出してしまうよ
この街にいる限り
涙はとまらない
だから君の面影にサヨナラするために今迷いを断ち切って
なるべく遠くの街へ
名も知らない異国へ
電車に乗る僕は君の面影に見送られ
たぶんもう帰ることはないふるさとから異国へ向けて旅立ってゆく
思いがはじけたらその欠片を窓から放り投げて風にわたそう
もうサヨナラの時間さ
昔の僕も 面影の君にも
そろそろ現実が見える
その代わり思い出は消える
それが自分が自分で望んだこと
なのに涙
なのにせつなくて
心が崩れちまいそうだ
あの日あのときあの夜君と見た満月が今夜も浮かんでるから
消せない景色 忘れられそうもない夜
それだけ連れて意気地なしは生きる
忘れるための旅へ
そしていつかすべての思い出を忘れられた日がきたなら僕はもう一度この街を訪れようと思う
見知らぬ駅の空を見て思う
哀愁がつのるから気も変わる 街はもう秋の色。
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