詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
「この電車は奈落行きです
どこまでも底がない闇を落ちてゆくよ
真っ逆様 急降下、息つくヒマがない
絶叫マシンが好きな人にとっては最高でしょうね
心臓が飛び出すほどスピードは出るし
もう死ぬか生きるかの狭間くらいの恐怖と危険がゲラゲラ笑いながらキミを待っている キミを待っているよ」
トンネル抜ければ
そこは地獄だ
刑務所よりもずっとずっとこわい場所さ
エンマ様も鬼たちもみんなどんちゃん騒ぎ
朝も夜もなく一日中宴会してる
楽しい楽しい場所だ
だから奈落へ一緒に行かないか?
地獄へのパスポートはふたり分 ちゃんと手に入れたから
あとはあの扉をあけるだけ そしてあのコースターに乗れば地獄へと真っ逆様
もう戻れないけど
きっと現実よりもずっとずっと楽しい場所に違いないさ
だから行こうよ 行こうよ
楽になろうよ
そろそろ
生きたくもない人生なんて投げ出せばいいじゃん
痛みのない死に方なんてあるのでしょうか
きっとあるよ あるよ あるよ
地獄の炎は天まで立ちのぼって
鬼はじろじろ僕らを見ているよ
人間どもがまた来やがったと皮肉るよ
でも仲良くできるかな 愛想良くやあなんて言ってみるけど
奈落へ落ちていけば現実なんてすべてサヨナラ
過去の過ちも昨夜の悔しさもすべてにバイバイできる
だから 落ちていこう
奈落行きの電車
地下鉄より深い深いプラットホームからあと15分くらいで到着する電車
それまでには決めてよ
キミがこないなら僕ひとりでも行くから
迷いやためらいは命取りだよ
だからキミが決めなよ
僕は黙ってる
これは恋人といえど個人の問題だからね
そうこうしてるうちに来た電車
低いブレーキ音がホームに響く
振り返った場所にはキミはいない
壁がただあるだけだった…
僕はため息をついて開いたドアに飛び乗る。
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