ホーム > 詩人の部屋 > 甘味亭 真朱麻呂の部屋 > 影

甘味亭 真朱麻呂の部屋


[3712] 
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


今日も歩道に影を映して僕は帰る
僕が涙を流せば影もまねをして涙を流す
でも涙をぬぐえば影もぬぐうから
ほらお前から泣き止め
影はお前が泣き止まないと泣き止めないと言う

道はまだ続く
悲しみの影のほうはまだぬぐえそうもないが明日も笑えるように気力を余して

影よ 僕のまねをするならお前も俺が幸せになったらまねをして 家族を増やせよ
言われなくてもそうなるだろう
家族が増えりゃ影にも家族も増える
そのときは
そのときは
ひとりじゃないな

影さ 影さ 影さ 影さ 人なんて影みたいなもんだ
嬉しいばかり
影さ 影さ 影さ 影さ 命なんて影みたいなもんだ
悲しいばかり

もって百年ほど。たったそれだけの時間を人はどうしてこんなに精一杯生きるのか、わかるようで難解だな
一握の砂を少しずつ地にかえす
そんな毎日が僕には苦痛だった
都合のいい楽園はどこにもない
どこにも悲しみが存在するから
せめて少しでも笑顔でいられる
そんな場所を求めて影と歩く
時に暗闇に遮られたら影は消える
朝 起きるとまたいる
そんな影と二人
いやひとり?
歩く

悲しくても
影よ 行こうぜ
誰に話しかけてんだ、僕
影に 話してんだ

孤独な翼で行けるとこまで行こうと思う
弱まることはあっても決してやまない雨の中 降られて 濡らされて 僕は行くよ

どこまでも
悲しみを心に映して
影というもうひとりの自分を連れて
歩き続けよう
歩き続けよう
その先に求めるこたえはある

影、かく語りき。

2009/02/28 (Sat)

前頁] [甘味亭 真朱麻呂の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -