詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
夕陽が街を赤く染めたら遠くにいるあなたの顔を思い出す
いつも僕を叱ってばかりいたけれど時にくれるやさしさがなんだかうれしかった
子供たちのはしゃぐ声もだんだんなくなってカラスも姿を消したら大人の僕もたまには早く家に帰ろうかなあ
チャイムが街に響きわたるまえに
お母さん 今 あなたはだれと笑っていますか?
お父さん 今 あなたはお身体大事にしてますか?
しばらく会っていないし電話もしてないけど仕送りだけは欠かさないで送ってくれる
同封された手紙が泣かせるよ
電話してみようかな またあの懐かしい声が聞きたいな
ああ おなか空いたよ
街にはおいしそうな匂いとあたたかな家族の声が聞こえる
せつない 僕はひとり故郷を想う 東京のど真ん中で
あなたの笑顔
あなたのやさしさ
想いながら
それをおかずに
ごはんを食べる
ため息が湯気のように立ちのぼる
貧乏な僕に夢はあるか? 恩返しはできそうか?
僕は僕に何度もたずねてみた
こたえは今も声にさえならない 東京のど真ん中
古く安い風呂なしアパートの一室で故郷を想う
味噌の溶けきってない味噌汁を神妙にすすりながら
落ちてく夕陽に涙を流す 涙を流す。
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