詩人:赤坂 菜葉 | [投票][編集] |
北風ぴゅうぴゅう
凍え震えて寝袋の中
鬼の捨て子
気味が悪いと誰の声
鬼より怖い人の情
痩せた裸木老婆のよう
鉛色の冬空の下
春を待ちつつ微睡む夢に
ちちよ、ちちよと
鳴く子かな
深雪しんしん
重ねて積んで静寂の中
親なし蓑虫
蝶にはなれぬと誰の声
虫より醜い人の心
鋭い三日月刃物のよう
深藍色の夜空の傷
何を望んで紡いだ翅か
ちちよ、ちちよと
春遠く
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透明な液体に喘ぎ
気化するばかりの体温
フリルのドレス艶やかに
円らなお目眼は瞑らない
くちパクで
知らせた気持ち
伝わらない
金魚じゃないから
複雑な期待に淀み
鈍化するばかりの平穏
スリルのパルス高らかに
ふっくらお腹が見苦しい
目ヂカラで
知らせた想い
伝わらない
人間じゃないから
魚でも人でもなく
いっそ人魚になりませう
どうせ人でなしだもの
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月光町
地図にない場所
案内人は
月に照らされた影
マチビト達は
言葉を持たず
争うことを知らない
虹彩を解いて
瞳孔を開いたまま
心で会話している
笑う時は
声をたてずに
微かに口元を緩めるだけ
月光町
人知れぬ場所
迷い人に
ずっと寄り添う影
マレビト達は
安息を求めて
魂を擦り減らしてる
3万日の生涯
笑うのは一生のうち
たった22時間だとか
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折り紙の蝶々
浮ついた風に乗り
花から花へ
陽射しに
剥がれてく燐粉
泪で繋ぎ留めるけど
バイバイと
手を振るような羽根
再び持ち揚がらぬ心根
SOSに巻いた
触角でさえ
花芯を貫き盗み去る
詩人:赤坂 菜葉 | [投票][編集] |
過度の飲酒・喫煙も
病気の自覚がありながら
病院へ行かないのも
自傷行為の一種。
野垂れ死に上等と
腹さえ括れないくせに
追い詰められると
砂地に頭を突っ込んで
ひたすら
危機が過ぎ去るのを
待ってるだけの
ダチョウさながら。
現実逃避してる間にも
ジリジリ首は絞まってく。
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わたしは
哀しみの人になろう
涙を溜めて
慈しみを降り注ぐ
あの雲のように
たくさんの人に
厭われても
人知れず命の育みに
力を貸せるように
哀しみをかき集めて
恵みある雫に変えよう
わたしは
微笑みの人になろう
闇に浮かんで
穏やかに照らし出す
あの月のように
命を燃やして
輝けなくても
密やかに寄り添って
見守れるように
悦びを拾い集めて
穏やかな光に変えよう
気がつけば
ただそこにいる
そんな存在に
なれたらいい
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弱くなりたい
そうすれば
かなしみと
友だちになれるから
傷つけられたい
そうすれば
ひとの痛みが
わかるかも知れない
騙されたい
そうすれば
欺くことの苦しみを
分かち合えるだろう
詩人:赤坂 菜葉 | [投票][編集] |
漕いでいないと転ぶ
支えてないと倒れる
行き先はひとつ
行き方はいくつもある
直線でも曲線でも
終点は見えていて
すべて徒労と思えば
風は単なる圧力に変わる
どうせなら
風を背中に受けて
鼻歌まじりに
ペダルを踏みつける
ちゃりん
なんか落ちたけど
止まらない
振り返らない
そんなわたしも
吹き抜ける刹那の点景
あはれ
ゆらゆら
枯葉の振り子
落ちそで落ちぬ
宙ぶらりん
詩人:赤坂 菜葉 | [投票][編集] |
コンビニで
お釣りが777円とか
何げに見た時計が
11:11だったり
冷たい雨に打たれて
帰った夜に
作り置きのレモン・ティ
電子レンジで温めたら
ティーカップの取っ手が
「どうぞ」と
言ってるみたいに
こっちを向いてる
オマケみたいな幸運を
味方につけても
今は笑っていたい
生きていれば
好い事ばかり
じゃないけど
悪いことばかり
でもないよね
「ごめん」って
直ぐに言えたら
幸せになれるのに
ごめんね