詩人:アル | [投票][編集] |
ふたりで
とりとめなく
お喋りをしている時、
「私のこと好き?」
と中宮定子がふと
お尋ねになる。
清少納言が
「当たり前です、
何故そんな…」
と言いかけた時、
控えの間で、
他の女房が大きな音で
クシャミをした。
「あな、心憂。
空言を言ふなりけり。
よし、よし」
と仰って
定子は奥の間へと
入ってしまわれた。
たぶん、真顔で
聞いてしまった自分に
照れたのかも知れない。
好きに決まってる。
嫌いなわけない。
にしても、誰だ?
クシャミなんて
不粋なことするヤツは。
しかも
タイミング悪すぎ。
空気読めないにも
程がある。
おそらく当時、
定子は二十歳くらい、
清少納言は三十路を
過ぎたあたり。
主従という立場や
年齢の垣根を超えた
女同士の友情が
そこにはあった。
それから
5年足らずで
定子のお父さんの
道隆が亡くなり
彼女に変わって
おじさんの道長を
後ろ楯にした
従妹の彰子に
中宮の座を奪われる。
そして定子自身も
失意のうちに
25年の生涯を閉じた。
あとに残された
清少納言は
自分が
一番好きだった人の
栄華と没落を
知り尽くした上で
敢えて暗さを
微塵も表に出すことなく
軽いタッチで
枕草子を描き上げた。
われ、きみをば思ふ。
あっぱれ、
清原さん。
下の名前も
知らないけど、
1000年の時空を超えて
ぼくはあなたが
大好きです。