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アルの部屋


[174] 因果Ah‐ha
詩人:アル [投票][編集]


週末の朝
彼女は奥の部屋で
白いブラウスに
アイロンを当てていた

ぼくは
キッチン・シンクで
焦りに背中を焼かれながら
半ば諦めて髭を剃っていた

きみは郵便受けの
琉球新報を抜き取り
鍵穴にキーを入れて
ゆっくりドアを開けた

「あら、起きてたの?」

ぼくに
新聞を手渡したあと
玄関に揃えられた
見知らぬパンプスに
きみの視線が移動する
ぼくは
茫然たる想いでそれを
眺めるしか術がなかった
きみは静かにドアを閉めた

コツコツと
去ってゆく足音が
今も脳裏に響き渡る

「ん?なに?」
彼女が聞いた

「え?新聞…」
シドロモドロのぼく

他に答えようがなかった
それが如何に罪深くても

あれが全てだった
しあわせになる資格など
ぼくにあるわけがない

2010/10/05 (Tue)

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