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蒼月瑛の部屋


[16] 幕なき舞台
詩人:蒼月瑛 [投票][得票][編集]

止まない雨がそこにはある。
明けない夜がそこにはある。

今日は妙に明るい夜だ。
蒼然たる月は、いつもより大きく見えた。

「綺麗な夜だ。」思わず口にしたくなる。

月の光は色のない、真っ白な部屋におぼしき幻影を作る。
その蒼さと言ったら、誰かがくれる菊の花とよく似合う。

うすらぼけた光と私が織りなす影が、鏡となって、私を舞台へと引きずり出した。

最初で最期の大舞台。

少しだけ緊張してきたのか、身震いがする。

たくさんの観客もいない。セットも少々盛大さに欠く。

それでも、この舞台は台本通りに進んでいく。
その正確さといったら、どんな精密機械ともひけをとらないだろう。

決められた道に沿って、照らされる舞台。

そうこうやって台本通りにゆっくりゆっくりフィナーレの時を迎えるのだ。

これまで数々の舞台を見てきた。
その中でもこの舞台は、短かくにも、非常に落ち着いたいい舞台だったろう。

そして、この舞台も、もうすぐ終わる。全て終わる。

客の静寂が涙となる時。

そうこの台詞とともに。

そして、その時がゆっくり2回ノックした。

私は大きく息を吸った。


止まない雨がここにはある。
明けない夜がここにはある。


私は静かに呼吸を止めた。

2010/04/01 (Thu)

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