詩人:蒼月瑛 | [投票][編集] |
見えてるけど、遠くにあるもの
見えてるけど、その甘さに頬を赤らめることはできないもの
私にとっての飴玉はまだ未開拓の大草原
それは一種の世迷い言
だけど、私にとっては切なる願い事
一度も口にしたことがない
その飴玉をひょいと誰かが放り投げ、弧を描いて、うまいこと私の口へと運んでくれないだろうか。
それとも、誰かが四方に配る飴玉を知らん顔して口へと運んでみてはどうだろう。
しばらくすると
飴玉は届いた。いや、私が勝ち取ったのだ。
案外それは簡単に手に入った。
けれど口にしたそれは私が想像していた味ではなかった。
甘くするための砂糖や添加物、その他諸々が何重にもコーティングされ、混沌たる形状化された味
耐え切れず吐き出した
飴玉は抗うことも許されず、無抵抗に地へと堕ちた
土がべっとりとこべりつき、唾液が溶かした混沌たる何かで濁った飴玉は静かに行儀よく座ってる
その時、にゅうっと隅のほうから伸びてきた手
それは今まで飴玉を食べられなかった子のものだった。
その子の手が、私の口から吐き出された飴玉を
手に取ると、そのまま自身の口へ放り込んだ
呆然、唖然、驚愕そして軽蔑した
あんなに不味いものをしかも私が食べ吐き出し土までついてしまったものを
あの子は
平然と口にした
理解不能
顔色一つ変えず、口を規則的に動かし続けている
時折砂利の砕ける音が聞こえてくる
それでも、淡々とその子は口を動かす
その子を見ているとふと気付いた
その子だけじゃない
私の周りにいる子はみんな何かを舐めている
それは飴玉だとすぐに理解した
と同時に、私がこれからどうなるかも理解できた
隅から伸びてきた手に抗うことは許されない