詩人:あとりえ | [投票][得票][編集] |
急須と風鈴
海の上のちゃぶ台で鳴り
急須は待っていました
飲んで下さるのを
青い波の上の
ちゃぶ台で
青空の雲
水平線と区別つかぬ
或る時の午後
ちゃぶ台
荒れた波に乗り消えて
急須も浮かびます
飲んで下さるのを
待つうちに
風鈴ちりんと
ちりん
ちりんと
潮風に揺れ鳴りました
その風鈴は
或る森の木の枝で
風と木漏れ日中
鳴っています
割れ欠けた急須
その木の根本
さざ波
森の奥まで来て
何回目の文明の世の脚本でしょう
森の奥から抜けると
砂浜
ちゃぶ台囲み
しらす干しのおむすび
急須から
茶を頂き飲んで
小さな家族たち語り笑い合いながら
幻想は時に
せつなく
潮風と波音
さらっていく
風鈴ちりんと
風鳴らす世界に住んでいる