詩人:霧緋 | [投票][編集] |
目の前のあなたは
まるで眠っているように
優しくて綺麗な笑顔で
幼かった僕には
それが示す意味がわからなかった
ただ横たわったあなたの横で
いつものように眠りについた
『お母さん、朝だよ』
周りの知らない顔の大人たちから
悲しそうなたくさんの視線が
僕に注がれていた
あなたが豪華な車に乗せられた時
何処かすごく楽しい場所へ行くのだろうと思った
僕一人が残されて
帰ってきたのは小さな白い壷だった
『お母さん、いつ帰ってくるの?』
人形のように何も語らない知らない顔の大人たち
僕を見つめて泣いていた
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あなたの温もりが消えたこの部屋で
帰りを待ち侘びていた
きっと帰ってくる
いつものように『ただいま』って
優しく頭を撫でて笑ってくれる
小さな体に孤独を背負い
一人残されたこの部屋で
外からドアが開くのを待っていた
僕の後ろには
優しく笑うあなたの写真
僕の後ろから
お線香のニオイ
足音が聞こえる度立ち上がり
窓を開けてあなたを探した
安い布団に転がれば
大好きなあなたのニオイがした
僕を抱いて優しく笑う
もうあなたは写真の中にしかいない
気が付いたのは大人になってからだったよ、お母さん
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『今、幸せ?』
急に聞くからビックリしたよ
僕はどっちでもないなぁと思ったけれど
『うん』
って答えたっけ?
何でも理由を聞きたがる君の次の言葉は案の定
『それはどうして?』
だったけれど
僕は何も言わなかったっけ?
今だから言うけれど
あれはね
横で君があまりに楽しそうに笑うから
その笑顔につられちゃったんだ
答えを君に伝えたくても
君はもう空の上
あぁ…今日も青空綺麗だね
君は元気にしてるかい?
こんなに空が綺麗な日は
君の笑顔と笑い声
いつも思い出しちゃうよ
君は…
『今、幸せ?』
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幼い少女は
その小さな
胸に誓いました
帰らぬ人がくれた
目には見えない
たくさんのものを
その小さな小さな
胸に大切にしまって
強く強く生きようと
涙で霞んだ
白くて先の見えない世界で
唇を噛み締めて
真っ直ぐ前を向いて
しっかりした足取りで
少女は前を目指します
小さな一歩から始まる
この長い旅の果てに
遥か遠く
たどり着く日を
夢見て
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こんな晴れた日には
太陽に手が届きそうで
踵をあげて
手をいっぱい伸ばしたら
この手の中に
捕まえられそうな
気がしたよ
光を手にできたなら
僕もキラキラ輝けるかな?
まるで太陽みたいな
君のように…
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『お母さん帰ってきたよ』
満面の笑みで走り寄る僕に
渡されたのは白い小さな壷
『お母さん…どこ?』
『お母さんはこの中だよ』
そう言って
僕が抱えた壷を指差した
知らなかったよ
人間ってこんなに
軽かったんだね
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昔誰かから聞いた
溜息を吐くと幸せが逃げると
本当に
溜息の数だけ
幸せが逃げていくのだとしたら
私は
今まで
一体
どれだけの…
幸せを逃がしてきたのだろう?
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君は最後に笑った
涙で滲む僕の瞳をしっかり見つめて
掴んだ手は既に冷たくて
僕の心まで凍らせた
月明かりの下
君と交わしたサヨナラが
何度も
何度も
頭の中を駆け巡る
明日は笑って会えるから
サヨナラは悲しくなかった
だけど
もう…
僕に明日が巡ってきても
僕に同じ朝が明けても
君には明日はなくて
君には朝は明けなくて
視界は突然真っ暗になった
人混みの足音も聞こえなくなった
その瞬間は君と重なっていたけれど
いつのまにか僕の目や耳は元に戻った
だけど
君は
戻らなかった
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返って来ないと知ってるのに
何度も何度も呼び掛けた
君が笑っていつものように
話してくれそうな気がして
閉じた口から
何か言いたそうに
小さく漏れた吐息
開いたままの瞳は
何か伝えようと
視線を僕に置いたまま
外の風は冷た過ぎるから
君の体はだんだん冷たくなった
帰ろう
帰ろう
一緒に帰ろう
いつものように
手を繋いで
帰ろう
帰ろう
お家に帰ろう
いつものように
手を繋いで