詩人:地獄椅子 | [投票][編集] |
愛と呼べる確かなものなど俺にはないから、鼻だけがやけにどんどん伸びていくばかりだ。
権力と呼べる確かなものなど俺にはないから、貴女を傷付けないと、強さが足りないように思えてくる。
愛してる、と言うほどに俺の鼻は伸びてゆく。
ブラリとダラリと、長く黒く、ピノキオのように嘘を付けば付くほど。
「好きなんだって」思い浮かんだ口笛の旋律を奏でても、届くはずない。
まだらに続く道の途中、交差することなき、運命線。
流れる鱗雲に目を奪われて、貴女を忘れそうになる。
綺麗なだけの愛の歌。優しいだけのオーロラ。温かいだけの日溜まり。
全部嫌いで虫酸が走る。
どす黒い衝動に潰される二人称ゲーム。無意識のジョークがナンセンスを演出する。勝負する為の土俵に来い。セメントに埋め立てたセルマソング、ぐちゃぐちゃに散らかったままリピートして。
俺の爛れた鼻が、嘘の臭いに過敏になる。
嗚呼、人間て奴ァみんな、気さくに偽りを許すんだ。
みんな。
みんな。
タダイキルタメダケニ。
俺の嘘・黒・鼻は許せずに。