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ユズルの部屋


[83] ある人のカタチ
詩人:ユズル [投票][得票][編集]


日だまりの中の木の椅子
老人は気配を感じて振り向いた
同じように歳を重ねた
深い柔らかな声を聞いた

その音はなお聞こえていて
空気を震わせて確かに届く

彼はしっかりとしていて
緑の丘も秋の空模様も
筆を持って描けるだろう
絵の具を選んで

老人の隣に老婦人が腰掛けた
そうしているだけの時間だった
彼らは確かに覚えていた
遠い日の夕焼け空

暖かな季節はそこにあった
そして今も残っているから


あなたはどんな顔をしていたかな
わたしはここにいるけれど
あなたはどんな顔をしていたかな


わからなくなることがあった
老人はふと切ない瞳をする
まだ迷ってしまうのだ

長く生きてきたけれど
これから続く道と
歩んできた道の
その間を生きている彼は
そんな感情をどうにかする術を
持ち合わせてはいないのだ

2008/10/27 (Mon)

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