詩人:ユズル | [投票][得票][編集] |
日だまりの中の木の椅子
老人は気配を感じて振り向いた
同じように歳を重ねた
深い柔らかな声を聞いた
その音はなお聞こえていて
空気を震わせて確かに届く
彼はしっかりとしていて
緑の丘も秋の空模様も
筆を持って描けるだろう
絵の具を選んで
老人の隣に老婦人が腰掛けた
そうしているだけの時間だった
彼らは確かに覚えていた
遠い日の夕焼け空
暖かな季節はそこにあった
そして今も残っているから
あなたはどんな顔をしていたかな
わたしはここにいるけれど
あなたはどんな顔をしていたかな
わからなくなることがあった
老人はふと切ない瞳をする
まだ迷ってしまうのだ
長く生きてきたけれど
これから続く道と
歩んできた道の
その間を生きている彼は
そんな感情をどうにかする術を
持ち合わせてはいないのだ