ホーム > 詩人の部屋 > 快感じゃがーの部屋 > [屑]

快感じゃがーの部屋


[1943] [屑]
詩人:快感じゃがー [投票][得票][編集]


朝靄・陰り・慈愛心。掴んで

丸めた小さな塵のよう
あの箱の中 吸い込まれてく

若さ故の鋭さは
勢いを増して 熱になり
ある朝 得体の知れない
不可思議な確信を得る

盲目少女は盲目のフリをしているだけ

世界は許したのではなく
流れてゆくから
少女は 忘れられただけ

「売れ残り玩具で十分」

やさしい強がりが聞こえた

忘れられることは
もっとも怖ろしいこと
そのために誰かを犠牲にして
傷ついたり 傷つけたりする

博愛主義者の彼は
彼女の孤独を知らない

抱きしめるたびに
少女の心は壊れていくのに

その悲鳴をことごとく
ぜんぶ聞き逃すから
二人は いつまで経っても 交差しない

彼が痛みを撫でるたび
傷口は広がるばかり

あるとき 夢が弾けて
夜は本当の夜になり
朝は朝の必要性...を失って

「ダストボックスにもう 何も入らない」
「想いでいっぱいだ!」

誰かが喚いた

溜め込まれた屑 夜空に溶かして

「一緒に雲切れになってしまいたいね」
なんて 無理して笑って。

「後生は要らないけれど
輪廻が正しい としたら
今度 生まれ変わるときはもう
最初から 塵に生まれてこよう...」

盲目少女の生き方は とても苦しい

だって 気取っているだけだから
本当の醜さをちゃんと
きっと一番 知っているから

残された選択肢はここにひとつだけ

彼女を殺したのは
まさに盲目の大人たち
私はあの強がりを まだ覚えているよ

屑は屑でも 彼女の場合は星屑

一瞬きらめいて そして散る
美しく泣いて夢を見る

その刹那に彼は
恋をしてしまったんだ
その刹那に私は虜に
なってしまったんだ

少女は 退屈凌ぎのキスをして
平行線の上を歩いて行くから

背中がどんどん小さくなって
温もりも吐息も不確かになって

私は急に怖ろしくなった...

盲目少女の生き様は
とてもかなしすぎて
もう誰も思い出せない

もう誰も 思い出さない

...それはまるで風に舞う塵のよう。

忘れられてしまうことが悲劇なのではない
忘れ去ったことさえ
忘れられてしまうことが

悲劇なんだ...

2014/02/11 (Tue)

前頁] [快感じゃがーの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -