詩人:風凛 | [投票][編集] |
しかし、―――
「おばあさん!…どういう事?あれは本当だったのか??酷いじゃないか!!!」
彼は自分の(元?)彼女と話した直後、質屋に駆け込みました。
おばあちゃんは冷静に言いました。
『貴方は関係を質に入れたんだよ。だから仕方有るまい。夢を叶えたいのなら、本物の強い覚悟が必要なんだよ。今から、あの子に記憶を返すことは出来るけど、あんたは夢を失うことになるよ。それでも記憶を戻すかい?』
もしここで記憶を戻したら、…俺に本当の覚悟が無い証明になっちまうな…
若者は頭が冷えました。
「そう…ですよね。夢の代償ですか。俺はとても…甘かったみたいです。時間を取らせてしまって、すいませんでした。」
彼は独り、質屋を後にしました。
彼はいろいろな事を考えました。
これからのこと。
今はひたすら店を頑張って、お金を返せば良い。
そうすれば、あいつの記憶を戻せる…
彼はその一心で、周りに目もくれずに働き続けました。
その後、店はそれなりに繁盛し、リピーターも増え、
――半年が過ぎた、ある日。
ガチャッ
[こんにちは。]
「…なっ!」
彼の店に(元)彼女がやってきたのです。彼は挨拶さえ忘れて固まりました。
(「なぜだ?まだお金は返せていないはずだが…?」)
[あの、ここでバイトさせて下さい。このお店、すごくいい雰囲気だったので。]
「え?あぁぁ、はい。ではこちらへどうぞ…」
こうして、かつての恋人がバイトにやってきたのです。
しかし、その関係は従業員と店長にかわりはありませんでした。
この頃ようやくお金が貯まり、質屋に返済が出来そうになりました。
彼は算段がつくなり、雨の中、引き出したばかりでパリパリの札束を掴み、質屋に飛び込みました。
「おばあさん!」
彼は叫びました。
肘掛けいすに座ったおばあちゃんが振り向きました。とても優しそうな顔でした。