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トケルネコの部屋


[79] 皓城夜話
詩人:トケルネコ [投票][得票][編集]


透みゆく空には 向日葵を投げて
崩れゆく陽には 紫陽花を植えて
おとなしい猫と 人肌のミルクを分け合って
砂場のお城に 影を造ろう

長いながい尖塔の影を

瞼から零れた青は
グラスの縁の赤と混ざり
カクテルを淡い紫に染める

組んだ足から広がる夜に
羽を伸ばす純白の蝶

それは一つの物語
影のお城に囚われた

独りの少女の物語


錆つく浜辺には 銀の櫂で漕ぎだして
暗幕の波間に 金の貝殻を探して
おとなしい猫と 優しい枕に包まって
積木のお城に 影を掛けよう

高いたかい梯子の影を

空の滲んだ青は
日々の翠雨と溶けあって
遥かに碧い海へと繋がる

閉じた繭に広がる夜に
羽を休める純白の夢

それは一つの物語
星の狭間で見つめあう

二つの月の物語


2010/05/27 (Thu)

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