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トケルネコの部屋


[92] 掠れた文字
詩人:トケルネコ [投票][編集]




確かにその剥製は泣いていました


身動きもとれず
魂は枯れ
ただ一点を見つめることしか出来ず
それでもなお、泣いていました
声も出せずに


時間の空白の中で
虚ろな瞳の奥で
固まった翼を抱いて
夜の隅で


『届かないものばかりだ』


彼に言葉を与えたら、きっとこう云うのでしょう


『くだらない幻想さ』


彼に希望を与えても、きっとすぐに捨ててしまうから・・・


砂の上の
コンクリートの中の
汚れた布に包まり
彼は見てる


蒼い空を
飛べるはずだった
飛び立つはずだった
雲の彼方を


『失意』

その剥製のプレートにはかすれた文字でそう書かれていました

どこまでも表情のない視線の先には真っ青な壁だけがありました

乾いた瞳は何も捉えず、ただジっと薄笑いのまま・・・


けれど確かにその剥製は泣いていました



2009/12/06 (Sun)

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