詩人:evans | [投票][編集] |
あさま山を望む城下町
信州小諸
この坂の多い町の中の
小さな村に広がる
たくさんの田んぼと畑
このあぜ道を
よくあなたと通ったね
還暦を過ぎたあなたは
ときに
大きな籠を背負いながら私の手をつなぎ
ときに
一輪のリヤカーに幼い私を乗せて
茜色の空につつまれながら
夕暮れの空につつまれながら
まだ舗装されていないこの道を
夕焼け小焼けの唄を歌いながら
一緒に家路に向かう
あなたの手のぬくもり
あなたの優しい声
いま鮮明に思い出す
きょう 92歳のあなたは
無言のまま 身動きもせず
たくさんの秋の花に飾られ
たくさんの人びとに
見送られながら
あの懐かしの
あぜ道だったいつもの道を
通ってゆく
天高き秋のあおぞら
ブドウの実に橙の渋柿
懐かしの村の風景
涙で霞んだ風景
おばあちゃん
いままでありがとう
そして さようなら