詩人:どるとる | [投票][編集] |
世界の下ごしらえ
すましたのなら
弱火でコトコト
煮込むのさ
なかなか一筋縄ではいかないやつさ
だからね面白いんじゃないかと歌う
たとえばいつか 歌ってた 愛や夢を
ロマンスという魔法の言葉に変えて
僕は 君に幾千の星を降らそう
ひとにぎりのロマンスだ 今夜は
わくわくし通しのパーティーだ
招待状なんか いらない
誰もが 踊って 歌って 騒げる
魔法じかけの 夜
覚悟はいいかい?
雰囲気にのまれるな
夢から覚めたくなくなるの
世界中のレシピ
知ってるコックでも
知らない 味わい
舌を うならせる
なかなか どうして楽しい気持ちさ
どうしてくれるんだ既に引き返したくない
虜なんだ この危うい 幸せに
僕は 帰りの切符まで買っていないことに
今さら気づいてしまうの突然に
ひとにぎりのロマンスだ 今夜は
わくわくし通しのパーティーだ
招待状なんか いらない
誰もが 踊って 歌って 騒げる
魔法じかけの 夜
覚悟はいいかい?
雰囲気にのまれるな
夢から覚めたくなくなるの
君を愛さずにはいられなくなるの
それを愛と 欺けば
なんて素敵なロマンス
ああもう帰りたくない。
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誰かの帰りを待ちわびる誰かの
そわそわする 貧乏揺すりのリズムは
僕の胸の中にもなんとなく伝わるよ
街中は今 真夜中過ぎの
終電もさっき終わったとこなのさ
少しだけ ざわめいた胸の 突き刺すような痛みを早く
取り除いてくれよ あの間の抜けたようなアホ面見せて
ただいまって ただいまって さっきも言ったでしょう
けれど何度も言いたくなる そんな気持ちにさせるの
夜の街を星のように駆け巡ろう二人で
夜更かししよう 今夜は寝かさないよ
二人だけの 長い長い夜の散歩に出よう
昼間一緒にいれないぶんだけ楽しみなの夜が
眠ってるなんてもったいないと思った
真夜中の逃避行!
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レコードは回る
観覧車も回る
命も回る
巡る螺旋の階段を
上ったり下ったり
繰り返す約束のように
押し花にした 遠い日の思い出は
いつかの夜に咲いていた光さ
僕を間違いなく 明日に連れていく
そのゆるやかな回転に委せて
僕は 今日も さんざん泣くだろう
隙あらば笑うだろう
雨のように 陽射しのように
この身に降る定めある時間
砂時計だけが 落ちるよ
何もかも回る世界で
命だけは 永遠を知らないよ
だから どんなに似ていても
目の前の花は いつか見た花じゃない
そして僕もいつかその意味を知る。
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ふしだらな ゴーサイン
ありのままではいられないの
ふれたそばからとけていく思いは
冬の日の白い雪に似て
誰かが 敷き詰めた
道の上に 思い出が
咲いているでしょ
あんなふうに笑ってたっけ
あんなふうに泣いていたっけ
ひとつひとつ思い出しては 含み笑い
一人だけで 笑ってないで僕にも教えてよ
その笑顔の向こうの景色
まだ知らない物語のあらすじを
語って 聞かせて
画用紙に描いた世界
その中では誰だって主人公さ
片道だけの旅 数あるメモリーズ
頭の中の引き出しにしまう
はじまりを告げる朝の向こうに
誰かが前に一歩踏み出した
鈴の音のような足音
手をつないだだけ けんかもして
抱いた傷の数だけ 忘れられない痛み
思い出すたびもう消えたはずの傷痕が
ひとりでに開いてあの日の風をはこぶよ
優しさっていうのならそんな色と形
明日の天気さえ僕は知らないままでいい
そのほうがいくらか楽しい
遠い誰かが想像した物語が
たとえば僕の今を少しでも
楽しいものにしているのならば
必要ないロマンスなんて1つもないね
なんてことに 気づいた僕は
昨日より少しこの世界が輝いて見えた
あんなふうに笑ってたっけ
あんなふうに泣いていたっけ
ひとつひとつ思い出しては 含み笑い
一人だけで 笑ってないで僕にも教えてよ
その笑顔の向こうの景色
まだ知らない物語のあらすじを
語って 聞かせて
まだ知らない この世界の空の色に
この手でふれさせて。
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ただなんとなく歩いてきました
目に見えるレールの上を
なるべく人の道 外れぬように
思えばそれは 誰かが引いたレールで
僕は 電車のように引かれたレールを
ただ走っていたんだね
でも僕は電車じゃないし レールを走らなきゃいけない理由もないから
そろそろ 引かれた線の向こうに行くよ
君は来ないのかい?不安をぬぐえないから
まるで「安心」は「退屈」と同義語だ
裏返しのシャツみたいによく似ている
だけどよく見れば縫い目が丸見えだ
恐れるものなど何もない ただ
泣いているだけでも たどり着く場所がある
見つけたよ 小さな花だけど 僕にはこれくらいがちょうどいい
幸せと名付けよう 「当たり前なこと」が今さらこんなにも宝物
ただ なんとなく 向かい風に逆らって
流れとは 逆に 進んでみた けれど
いつの間にか流されてる 同じ色に染められていたんだ
でも僕は まさか塗り絵でもないし
染められるわけもなく 色なんてあるのかすら疑わしいくらいで
引かれたレールを歩くくらいなら 家路のような あたたかな場所へと続く道を
「妥協」と言い換えたのは「諦め」と言いたくないから
カッコ悪い自分をひた隠しにして
線の内側で いつまでも駄々をこねてる少年
恐れるものなど何もない ただ
泣いているだけでも たどり着く場所がある
見つけたよ 小さな花だけど 僕にはこれくらいがちょうどいい
幸せと名付けよう 「当たり前なこと」が今さらこんなにも宝物
「ありふれていること」が今になってこんなにも愛おしい
なんでかなあ なんでかなあ。
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身に余る幸せは この身体を
欲望に沈める だからいらない
両手で 抱えきれるほどの幸せだけで
いつまでも 満されていたいと願う
この手に余る希望は 残酷なほど 脆すぎて
ふれたそばから 崩れて もう跡形もない
欲しいものすべてを手に入れた僕はきっと空っぽだ
一体何のために 僕は 欲しかったんだろう
それを手に入れるためにどれほどの人を傷つけただろう
どれくらい嘘をついたのだろう
自分をあなたをどんなに裏切っただろう
身に余る幸せは この身体を
欲望に沈める だからいらない
両手で 抱えきれるほどの幸せだけで
いつまでも 満されていたいと願う
僕は 満ちることのない海でいたい
引き潮のまま ただ青い空を眺めていたい。
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終電に乗る夜 真夜中をとうに過ぎて
誰かが忘れたビニール傘が寂しそうに
今にも消えそうな明かりに照らされている
電車が見えなくなるまで見送るのが
僕の小さな楽しみになっていた
改札を出ると そこは 海の底みたいに暗い
座席に 沈んで 電車に揺られて見た夢はどんな夢だろう
さっきまでのこともまるで遠い昔のような
時間の魔法で 僕は 目覚めて もう少し
あの角の向こうに
優しい家の明かり
お疲れ 電車が 今日も通ります
ガタゴト ガタゴト。
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ピントのずれた物語
見えてるようで見えてない節穴の目
赤とんぼ 飛び交う田舎道
友達とはぐれてしまう 夕暮れ
いつまでも もういいかいって声が山々にこだまする
誰かが言っていた 多分空耳さ
それはじんわりと手のひらを染める冬
赤茶けた屋根の上を滑るように降る雪
かじかんだ手を こすりあわせて
通りすぎていく 窓から望む原風景
いつか出会った優しい痛みのようだ
ネジの外れたタイプライター
軋みながらも 仕事だけは難なくこなす
名前をつけたよ 君のはアネモネ
分厚い辞典に挟んだタンポポの押し花
いつまでも 引き出しを閉められずに
眺めてる レンズの向こう
僕を見ているのは あの日の僕だ
楓舞う 並木道に誰かが描いた切なさ
言葉もなくただ立ち尽くすのは凩
ふいに誰かに名前を呼ばれた気がした
振り返ったときには もうあんなに遠く
手放した風船のように 雲のずっと向こう
目を閉じたまま 息をととのえて
散らかした部屋片付けて
思い出重ねた写真も消えない雨の冷たさも
誰かが この唇に残した甘い余韻も
染まってゆく ただ汚れのない純白に
それはじんわりと手のひらを染める冬
赤茶けた屋根の上を滑るように降る雪
かじかんだ手を こすりあわせて
通りすぎていく 窓から望む原風景
いつか出会った優しい痛みのようだ。
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アパートの窓に映る
昨日から降り続く雨
水玉模様の空
窓に描いた しずく
いくつもの雨粒が
真珠のように見えた
通りすぎる 季節に
手を振る風 ふわり
そっと撫でるように
ドアを閉めるよ
さよならを言おう
もう同じ色に染まれない
冬が来ても 春が来ても
花はきっと 咲くたびに新しい色に染まる。
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ストロボで焼きつけた あの思い出
花のように 咲いては散ってく
夜空に 打ち上げられた光の閃光
まばたきをせずにごらんあそばせ
どうか その瞬間を切り取って
シャッター切るように閉じ込めるよ
鼠花火が 火花を
散らして 回る
夜店に 群がる少年
金魚すくいに夢中
振り返るその向こう
思い出す原風景は
いつでも そこにある
光り輝きながら回る
フィルムの向こう
君のうなじと 浴衣
硝子細工とフランクフルト
風鈴の音が呼び覚ます 夏休み
恋の傷痕 汗にしみるほど 美しく
藍色に 染まる
鼠花火が 火花を
散らして 回る
夜店に 群がる少年
金魚すくいに夢中
振り返るその向こう
思い出す原風景は
いつでも そこにある。