詩人:どるとる | [投票][編集] |
君のすべてに イエスと答えたい
僕なのに そうできない僕だよ
ごめんね 君を思うと辛くあたってしまうのも愛の裏返し
世界中 どこを探してもいないような君だから
君には僕の足りない部分を 知っていてほしい
あとひとつ 何かが欠けているような 思いを残して
お互いにダメだなあなんて笑いながら 気付くんだよ同じ光に。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
少しつま先立って
上昇気流に 乗って
何処へ行こうか
物語は宛もなく 風が吹く方へ
泡になって消えたマーメイド
輪廻があるのなら
もう一度 生まれ変わって
変わらないあの笑顔で
波間を跳び跳ねてみせて
ウィンクひとつで悩殺
僕はもうあなたの虜
飛び魚の ジャンプ
きれいな半円を描いて
まっ逆さまに落ちてく
夢の果てへ 奇跡の真ん中へ
物語の盛り上がり場へ
しぶきを上げて あっという間にもう見えない
さよなら マーメイド。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
長い休みが終わるとやれどこに行っただのと旅行の自慢話でクラスは盛り上がる。
Kくんは家にいたというが、町内にいながらにして世界一周をしたというのだが、どういうことかを聞いたクラス一同は大爆笑した。
「パリという喫茶店に行ったりスリランカというカレー屋に行ったり南極というパチンコ屋に行ったりしたよ。まあ次の休みにはベルギーっていうケーキ屋に行くけどね」
詩人:どるとる | [投票][編集] |
ある眼鏡屋に新商品の眼鏡が発売されていた。
その眼鏡をかけると全然見えない。
それどころか真っ暗な真っ黒な闇が視界を覆う。
これはなんのための眼鏡なのかと店主に聞くと
「ああ、これは目が節穴の人用の眼鏡です。節穴じゃない人がかけても何も見えませんよ」
入れ違いに来店してきた客がその眼鏡をかけて
「これはよく見える。私の節穴の目にぴったりだ。これで私もおまえの目は節穴かなんて言われないですむ。大事なことをもう見逃さないでいられるね」
それを聞いていたが、節穴の目を持っていない彼にはさっぱりその良さがわからなかった。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
六畳ほどの部屋に男が寝ている。蚊が頬にとまるとパンと頬を叩き蚊を落とした。
別の日、蚊の親子が昆虫専用のマーケットで新発売の人間用と書かれた線香を買っていった。
「ママ、これで僕らは人間に殺されなくてすむね。人間なんてこれでイチコロだよ。」
詩人:どるとる | [投票][編集] |
ある図書館で貸し出された本の中にひときわ大きなもくじだけの本がある。何百ページと続く本すべてがもくじで埋め尽くされている。
肝心の中身がないのだ。
なぜこんな本があるのかと図書館の司書に問うと司書は双眼鏡を取り出した。
ばかでかいプレパラートに本を裏表紙にして置くとのぞけと促した。
覗いてみるとたくさんの活字が第一章から最終章まで分子レベルの細かい字で書かれていた。
ただ、そのすべてがある人物の人生における失敗談をまとめたもので内容はひどくつまらないものだった。
ただの黒い裏表紙だ と思っていたのはすべて本の中身だったのだ。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
西暦3000年、地球は滅亡する寸前。
人が生きられる星に向けて地球脱出のために宇宙船をつくっていた。
もうじき宇宙船が完成というときに学者が血相を変えながら地球脱出組織の指導者にこう告げた。
「地球を脱出しなくてもいい方法が見つかりました」
指導者がそれはなんだと聞くと学者は少しためらい答えた。
「それはどんな環境にも耐えうる体を持ったゴキブリに意識を移す方法です」
その場にいた人間が皆、一様に顔を渋らせた。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
浦島太郎から数えて400代目の先祖はいじめられている亀を見つけた。
だが、観たいテレビがあったため素通りした。
それを天国のモニターで見ていた浦島太郎はモニターに映る先祖に天罰を与えた。
あっという間に先祖は年老いておじいさんになってしまった。
結局、浦島太郎のように玉手箱を開けなくてももれなく老人になる浦島家のひそかな秘密。
浦島太郎以降の先祖は皆、なぜか早死にが多いのはそのせいである。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
長年の研究によりF博士はついに待望の薬を完成させた。
それは飲めばたちまち人間の寿命を300年は延ばすという画期的な薬だ。
早速薬の効力を試すためチンパンジーを連れてきた。
「さあチンパンジーくんこの薬を飲みたまえ」
チンパンジーは受け取った薬を飲んだ。
そのとたんチンパンジーは跡形もなく消えてしまった。
これはどうしたことかと博士はチンパンジーのデータをモニターに映す。
するとチンパンジーは驚いたことにちょうど300才だった。
300才のチンパンジーに300年寿命を延ばす薬を与えたために薬が逆に働いてしまったらしい。
いろいろ改良を施してようやく発売された薬には注意書があり
「300才の方は飲まないでください。用法用量を守り正しく服用してください」
と書かれていた。
その注意書を見た人たちは皆、変な注意書に首をかしげた。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
僕は ただひとつさえ答えられないよ
世界の色や形やさえ与えられたものだ
指先にちょこんと座る小さな 可愛い赤い花が
時の隙間に こぼれ落ちてく
僕は 行ったり来たりする振り子に合わせて 行きつ戻りつの旅をしている
夜が明けて そしてまた日が暮れていく
あの空と同じ赤い色に染まった君にそっと ほおずりすれば
寒くても心まで あったかいね。