詩人:どるとる | [投票][編集] |
たとえば 悲しみは
環状線をゆく
電車にも 搭載されている
たとえば 喜びは
スズカケの木の
根元に光る
昨日降った雨の小さなひと粒に重なる
さよならを言うのなら
はじまりを置いていけ
いつかまたここで
出会えるその日のために
ただいまを言うのなら
おかえりをくださいな
果てしない物語の
あらすじをまだ知らない
環状線をゆく
いつものあの席に
座って 眠り込む
あの人の胸の中に
その睫の上に
明日は舞い降りる
そっと静かに。
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神様の指で筆記された世界には
いつか「終わり」が書き足され
神様は 人間は失敗作だと言った
だけど 人間は時折神様の意表を突く
土星の輪っかを くるくる回る
運命の周りを くるくる回る
神様はその様を ずっと眺めてる
干渉は一切しない
だけど時々 神様は涙を流したりする
何かに笑ったりもする
神様は言うよ
今なら人間を 愛すこともできるだろうと
神様は言うよ
今はあの日じゃ知らない人間の心を知ったからと。
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晴れた昼下がり 君は窓辺に座り
絵を描いていた 何を描いているのと
聞くと「世界」と大ざっぱに言ったよ
風は私のちっぽけな苦悩を せせら笑うように 吹き抜ける
忙しさと忙しさ隙間に ほんの少し生まれた 開け放された自由の中で見つけた愛すべき時間
いつか咲いていたヒルガオの花
君が言う「世界」はきっと僕が思うよりずっときれいで
ずっと 輝いているんだろう
だから 自分ばかりの悲しみに 僕は迂闊に涙を流したりはしない。
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ふと目をやる部屋の中 テーブルの上
所在なげに 置かれた誰かが好きだと
言っていたティーカップ
満たされることのない思いのままで
ただ先を急ぐような街を眺めてる
凸レンズから覗いたような ぼやけた世界には こんな苦笑いがお似合い
日々悪びれることもなく積み重ねる嘘や言い訳がシャボンのように浮かんでる
独りきりの帰り道影は長く伸びて
僕より低い君の影が僕の背に追いついた
何かをごまかしながら笑ったのを
君は見逃さなかったんだね
誰にも必要とされず道端に捨て置かれた吸い殻や空き缶は
誰が拾ってくれるのだろう 誰が愛してくれるのだろう 襤褸切れのような心
夕闇から 逃げてみるけど夕闇は僕が どこまで逃げても
いつの間にか夜を連れてくるんだ
静かすぎてさ僕にはたまらなく 寂しかったよ
だからだから
誰にも必要とされず道端に捨て置かれた吸い殻や空き缶は
誰が拾ってくれるのだろう 誰が愛してくれるのだろう 襤褸切れのような心
僕なら迷いもなく愛せるのに
人は人の涙のそばを素通りしてゆく。
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白い 紙ひこうき 空へ 飛ばしてみよう
夢を描いた 紙ひこうき 未来へ飛ばしてみよう
夕暮れの空にほら
浮かんだ雲は なんだか俯いてるみたいで
少し 切なくってたまらなくなったんだ
訳もなくぶらぶら
どこまで行くのだろう 願わくばこのままどこまでも
何か探していた 何か求めていた
中途半端の僕にも見えるもの つかめるもの
明日に 向かって 飛んでいく紙ひこうき
いくつもの 人の願いや夢が 叶いますようにと祈りながら
心の中で折ったのですね
夢紙ひこうき 飛ばして 今、僕も未来のドアのノブに そっと手をかけてみる
錆び付いたブランコ 漕ぐのが好きだった
誰も居なくなったあとの公園が好きだった
涙流しながら帰っていた 道の上に 街灯が並んでこちらを見ている 優しくしないでくれよ 冷たくあしらってくれたら
何もかも捨てられるのに
何か 忘れていた
何か 見失っていた
優柔不断の果てに見た後悔に似たためらい傷
明日に向かってゆく 旅人のふりで さすらってみる 風に吹かれてみる 何かを得た代わりに何かを失ってゆく
そんな定めにさらされながら
夢紙ひこうき そっと僕の元に帰ってくる
紙ひこうきを作り直そうと 紙を開いたら そこに懐かしい夢が下手くそな文字で書かれていた
「宇宙飛行士に
プロ野球選手に
船乗りに 海賊に
王様になれますように」
統一性も何もない
バラバラな夢が躍ってた
明日に 向かって 飛んでいく紙ひこうき
いくつもの 人の願いや夢が 叶いますようにと祈りながら
心の中で折ったのですね
夢紙ひこうき 飛ばして 今、僕も未来のドアのノブに そっと手をかけてみる
今はあの頃の僕のように夢を追いかける
子供たちに 笑いかけてみる。
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目を閉じてごらん
畳の上 カーテンの隙間から差し込む光
意識の狭間に 忍び込む ただ無邪気な白
隠した幼さが 素直な自分を遠ざけても
いつしか 離れた手はまた 繋がるだろう
出会いの数だけ別れの数があるのなら
別れの数だけ 出会いの数があるのだろう
悲しいことより辛いことよりも
嬉しいことや楽しいことを考えて生きていきたい
今は 憎しみに ふるえているがいい
いつか、完全な白に染まるまで
僕は引かれた線からはみ出したままで
少し わがままに幼さを謳いながら
透けた空に融ける
透けた空に融ける。
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見えているものだけでは ないよ
この世界には 見えないものもあるよ
そんな「当たり前」を 知っているなら
見えないものともうまく付き合って行けるはずだ
夏の終わり まだ蒸し暑い昼下がり
アスファルトに 散らばる蝉の抜け殻
瞼の裏に まだ焼き付いているんだ
まるであなたのよう 胸の片隅白く横たわるうつせみ
窓の外には たくさんの音が
たくさんの景色があふれているよ
知ろうとしなければわからないものも
知りたくなければ目を閉じることも出来る
耳をふさいでも 聞こえてくるのさ
あなたのあの声 あなたのあの言葉
記憶の奥底にまだ咲いている
まるで日焼けの痕のように傷を残す うつせみ
風鈴の音がしていた
僕は窓辺で その音が遠ざかるのをただ
聞いていた ただ聞いていた
夏の終わり まだ蒸し暑い昼下がり
アスファルトに 散らばる蝉の抜け殻
瞼の裏に まだ焼き付いているんだ
まるであなたのよう 胸の片隅白く横たわるうつせみ。
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見えますか あの歩道橋から 見えますか
沈む夕日が
暮らしを 支える 優しい手のひら ぬくもりは伝わってますか
川の流れは時の流れに似て 穏やかなときもあれば はげしいときもある
ほら見てごらん 河川敷に 悲しみが浮かんでる
だけど喜び はその悲しみに負ぶさるようにあるのさ
その闇の中から見えるかい 光を取り戻したら 笑える隙を見つけて 夢から目覚めた君とキスをするのだ。
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夜の中 朝の中 僕の中 君の中
ポケットの中 瞼の中 胸の中
切なさの中 悲しみの中 喜びの中 手のひらの中 足の裏の
その中に ある
どんな場所 どんな人のそばにもあるよ
どんな景色の どんな音や色の中にでも
その中に その中に
見えない闇の向こう
聴こえない
渦巻きの向こうに
浜辺に打ち寄せる
白い貝殻のような
きれいな小さな何かが宝物のように光っているのを僕は知っている。