詩人:どるとる | [投票][編集] |
弱さは強さで 強さは弱さで
傷跡隠せば べつの傷跡がひらくよ
流れていく血潮の中 優しさを潜めてる
夜が 朝が ぼんやりとした 昼下がりが
この街の空気を重たく 変えている
色鮮やかに 染まった 季節の色をした景色が瞳に 色んなものを映しては 幸せの影にある涙さえ届ける
もう僕は子どもじゃないんだ だからわがまま言うことはできない
だだをこねても許されていたあの頃 思い出していた 休日の夜
嘘偽りなく 伝える 僕や君に 伝わる
曲がった光 僕は照らされている
無理矢理にでも笑わなきゃだめなとき
僕は子どもみたいに泣きたくなるよ
でもそれはまだ素直な心 捨ててないからできることだ
だから今はまだ曲がった光に照らされたまま 強がることもいとわずに
歩こうよ 君は独りじゃない。
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気づけば あたりは夜 僕はただ窓の外
見つめて あるはずもない星を探す
手のひらに 優しさひとつ 乗せてみるけど
君のぬくもりと比べても 君の愛に勝るものなどないことを知る
帰ってきた僕はドアを開けて 鍵を開けることにさえ手こずる始末さ
少しだけ悲しかった
少しだけ切なかった
それだけでただそれだけで生きることが疲れてしまう
心に夜はやってくる
瞳に映るものは幻
ただ笑うだけただそれだけでもとても難しくてため息が出る
足取りも重く 歩き出した日々のずっと先に 揺れる不安の隣に寄り添うわずかな希望
夜の窓辺に 寄りかかって僕は想う
明日もこんなふうに生きる痛みを知るのかな
夜の窓辺は ひどく泣くのには都合がいい
全ての悲しみとさよならするにはまだ時間が足りないよ
君はまだ笑うべきだ
悲しみ越えて笑うべきだ
君はまだ歩くべきだ
歩いて幸せに出会うべきだ
僕は僕に言い聞かせるんだ
夜の窓辺に寄りかかって
眠る前のぼんやりとした 遠のく意識で
わりに力強く想う
そうだ生きよう
少しでもそんな
気持ちがあるかぎり。
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夕空に浮かぶ いくつもの顔がある ただいまを待つ誰かのそわそわや
おかえりを抱えて家路目指す人の心
今日もいろんなことがあったな
楽しかったこと
悲しかったこと
気づけば両手は泥だらけ でもそれが生きていたということなんだろう
人から人へまた人へと繋がってゆく思いがある
バトンリレーするように明日の自分にこの思い届けよう
僕から君へ そして誰かへと受け継がれる絆がある
二人三脚するように一人ではできないよ
支えられて歩ける
風と寄り添い 帰ってきた君の顔が ほころんで ただいま言うから
今日を生きている意味がにじみ出るよ
その涙さえ 明日に届けたい
バトンリレーは続く
明日の自分へと命のバトンは渡される
走り出す僕の背中
今日の僕が見送る
明日の僕の顔には
きれいな笑顔が浮かんでる
生きる気持ちにあふれている。
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争いのある国の子どもたちは自分たちの境遇をうらんだりしない
争いのない国に生まれた僕たちはしょっちゅうつまらないことで人を簡単にうらむ
君が生まれた世界
僕が生まれた世界
それは同じだけど
全く別の世界だ
重ねられないよ
君の見ているその世界が 悲しみで満たされないように
そっとふるえる君の淋しげな手を僕が握っていてあげるんだ
君の見ているその世界に 残酷な現実があるのならば
君が抱えてるその現実を僕も一緒に受け入れよう 約束さ
君の見ているその世界に光を与えたい
争いのある国の人
幸せに惚けてる僕ら
似てるようで
全く似ていない
話し合えないよ
誰かの見ているその世界は 僕の見ているこの世界と何も変わらないというのに
君の見ているその世界が 例えば悲しく映るように 見え方ひとつで変わるから
君の見ている世界も
僕の見ている世界も
日ごとに変わるんだ
今日はどんなふうに映るだろう
君の見ているその世界は
僕の見ているこの世界は
すべての人が見ている世界は
ひとつかな。
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君は覚えているでしょうか
はじめて自転車に乗れた日を
ずっと昔のことさ
なかなか乗れなくて
転んでばかりいた
押してくれる母親や父親に叱られた
どうしてこんなことしなきゃいけないのかな
たくさんの疑問や悩みを 抱えながら自転車の練習を毎日していた
自転車にも乗れない
人はいないんだ
だから自転車に乗りなさい 乗れるようになりなさい
わけのわからない理屈をいつも大人は並べて
漠然とした要件だけを突きつけて
確かな理由も述べないままで僕はいつの間にかそれでも自転車に乗っていた
自転車にはじめて乗れた日は なぜか楽しかったんだ
きっとそういう気持ちにさせたくて一生懸命僕に付き合ってくれたんだろう
世界が広がった気がした 世界が僕に近づいた気がした
自転車にはじめて乗れた日は 僕自身に打ち勝てた日だって
思うから笑うよ
あの日の自分の傷跡に 今も膝小僧に かすかに刻まれてる
自転車にだって乗れるんだ だからなんだってできるんだ
行こう 行こう 夢の向こうへ
行こう 行こう 勇気のペダル漕いで行こう。
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彼はもういない ベッドはもう朝早くから
もぬけのからさ
野に咲く花に自分を重ねて
空に浮かぶ雲に生き方を学んで
在りし日の君を想い
在りし日の心を想う
曲がり角の向こう
何が待つのか
わからない
行ってみりゃわかるのにそれまでが長いな辛いな
同じ気持ちになれるかな
それだけが心配で
食い物も喉を通らない
在りし日の影が揺れてる
でも今はもういない人の残り火さ
彼女はもういない ひび割れた窓から時折吹くそよ風が供えられた花を揺らしてる
ただそれだけ
明日は知らない。
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色のない日々 モノクロの日々
僕は独り 空を見上げていた 割れた窓から あなただけをそっと見ていたよ
泡のような日々 絶えず生まれる日々
君も独り 空を見上げている ステンドグラスがキラキラ輝いて光を跳ね返してる
何を描こうか 誰と描こうか
孤独な絵描きさ 僕は 人生画家
光と影が巧く入り交じる よくできた世界
だけど 肝心なものはいつもなぜか矛盾していて それも含めてよくできた世界
午後のアトリエ いつも足りない絵の具の代わりに 命のかけらを使い回して
僕はまた少し 時間を奪われた
心のアトリエ 何万何億の絵の具の中のたったひとつの色に染まった命が
紡ぐ物語 危ういながらも先へと進む
悲しみも喜びも一枚の絵の中さ
涙も笑顔も同じ世界にあるように
残酷な現実も穏やかな昼下がりも
海や大地や空と国境を越えて繋がっているように
僕らもすれ違う毎日を生きている
それはまるでさながら絵を描く日々
戯れでもおふざけでもなく 僕は描く
悲しみさえも 形にすれば浮き上がる傷跡
消せない油性の傷跡
僕は絵を描く人
絵の具は尽きない
何度でも幾らでも
この心に描かれる
それはまるでさながら映画を観てるよう
全くの他人ごとさ 遠目で見ている人生
伝わるか 届くのか
自画像は描けない
自分の失敗や弱さや過ちはこんなに達者に描けるのに
それはまるでさながら器用な不器用者
自分の姿を知らずして 僕は世を写し取る
ひたすら絵を描くように生きる日々だ。
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僕はもうここにはいない 影さえ残さない
惑星のひとつから外れた 孤独な星さ
新聞でもテレビでも伝えきれないだろう
痛みや苦しみや本当の幸せまでは届かない
僕も冥王星と同じさ
何も変わりない
たくさんの人の群から外れた孤独な人さ
さよなら さよなら
その背中を向けて
少しずつ削れる
命を感じていた
もうベッドは
もぬけのからさ
さよなら僕の
冥王星よ どこに消えた
闇の中に浮かんでた
あなたの姿は
ただそこにいるだけで優しくて
僕は大好きでした
君はもうここにはいない 足跡さえ残らない
遠い空より遥かな宇宙より ずっと遠くへ 行ってしまったから
行ってしまったから。
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森羅万象すべてのものにある命よ
揺らぎながら落ちる誰かのお腹の中に
今日も生まれている
変わりゆくもの
変わらないもの
数えてはあなたを
そこに重ねるんだ
独り淋しく
冷たい部屋で死んでく人も
家族に囲まれて
あたたかい部屋で死んでく人も
それぞれの今日を生きてる
今日を生きた 君が明日も生きて また今日と同じ思いで生きる
そんな繰り返しのずっと先で君はいつか命の重さを感じるだろう
何気ないふうに生まれる命 ここにそこにいつも輝きながら
ほら 芽吹くよ咲くよ。
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少し不安げに 僕はドアを開けて ため息で始まりため息で終わる今日から帰った
期待はしないよ どうせうまくいかないから
最初から決めつけて閉ざされた心 抱えて生きる僕だよ
悲しいのはわかっているつもりさ
だけれど殻を破れない 僕はいまだ雛鳥のままなんだ
迷いもためらいも捨ててあしたのドアを開けて
雨の中でも 笑っていられたらいいのにな
ためらいや弱さが邪魔をするから
遠ざかるあしたの背中 眺めて 自ら希望を失う
少し自慢げに 君はドアを開けて 恐がることもせずに当たり前のように群に紛れる
たくさんの人の中にいると なんだか誰も似通った顔で
自分が誰なのか 君は何処なのか わからなくなる
誰も誰の代わりにもなれないよ
だけど たったひとりきりの自分というものを時に見失う
気後れも何もかも捨ててあしたのドアを開けて
闇の中でも輝いていられたらいいのにな
人と自分を比べてしまうから
遠ざかる理想の背中
追いかけても もう遅い 今は届かない光だ
都合のいいノブやカギはない あしたのドアには
自分でこじ開けるすべや策を探さなきゃ あしたは永遠にこないままだ
だから、
迷いもためらいも捨ててあしたのドアを開けて
雨の中でも 笑っていられたらいいのにな
ためらいや弱さが邪魔をするから
遠ざかるあしたの背中 眺めて 自ら希望を失う
気後れも何もかも捨ててあしたのドアを開けて
闇の中でも輝いていられたらいいのにな
人と自分を比べてしまうから
遠ざかる理想の背中
追いかけても もう遅い 今は届かない光だ
それでもドアを開けるしかない僕らは
あしたという無条件に与えられる 時間を 今日もただ過ごしてる
君はそうして迎えたあしたに満足しているのかい?