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どるとるの部屋


[1815] 閉ざす夏
詩人:どるとる [投票][編集]


邪な気持ちで
抱きしめた
幸せには輝きすら見えない
欲に染まって
嘘を重ねれば
涙がこぼれ落ちる
それだけ

時間が流れてゆく
影も残さず
誰かの笑顔も
素敵なぬくもりも
まるでなかったかのように消えてしまう
そして季節はめぐる
残酷なほどのスピードでまた景色を変えるだろう
大切な何かを壊すように

瞳に映る思い出のような景色は打ち上げ花火のように はかなく散って
あとに残るのは片づけられた見えない記憶のかけら
振り返る瞳に映る小さな思い出がまるで映画のように
僕を引きつけてやまない

そこにも あそこにも路地裏にも
そこにしかない思い出が咲いている
いつでも いつまでも胸の中には
大切な思い出の残り香が匂おう

思い出がまるで花火のように 天高く打ち上がったら

セミの声はやみ
鈴虫が鳴き
夏は静かに終わる

風鈴のあの涼やかな音も形(なり)を潜め
路地裏の猫は夜にもなればそれぞれの家へと帰る

思い出は少しずつ
遠ざかる
忘れてくものもある
だけれど遠ざかるにつれて新しい思い出も増えて
そして色鮮やかになる

胸の中にいつまでも映画のように流れる素敵なメモリー

線香花火のように
寿命の短い夏は
もう少しで終わるでしょう

冷たい麦茶も
冷えたビールも
いいけど
あたたかいお茶や
熱燗が恋しくなる
季節はもう間近

閉ざす夏
セミしぐれが
遠ざかってゆく

秋の風が並木道を吹き抜けてく
黄昏夕暮れ並木道僕の胸を突き抜ける新しい季節。

2010/09/11 (Sat)

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