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どるとるの部屋


[3154] 午前十時の後悔
詩人:どるとる [投票][編集]


絶え間なく続いてゆく時代は 少しの息継ぎもする事もなくせわしく刻まれる時間にいつもいいように流されて
名を変え姿を変え
僕らは今ここにいる時代になるまで旅人のように春や冬を何度となく移ろっていた

ありふれた毎日をどれだけ愛しても
いつか灰になるならこんな人生は無意味だと言った僕は馬鹿だった

人生は生きた長さじゃなく
自分の人生を誇りにできるかどうかで決まると知ったのはずいぶんあとさ
短い人生でも 充実した人生なら 例えば百年生きた人以上の濃密な人生になるんだね

時代はまだいくらも進んではいないよね
僕らもまだまだ歳っていうほど歳とってないよね

ありふれた毎日がどれだけ 恵まれているか この間の地震で不覚にも思い知ったよ
例えば いつものように三食飯が食え 寝る場所にさえ困らず 冷暖房のきく部屋があって だけどその一方で そんな当たり前な日常生活さえできない人がいる中で 『贅沢は敵』だと そんな言葉がついよぎる日々

狂おしいほどの暑さが続くね 暑さにまいって もはや 何も食う気がしないよ
電車の中で見た
おばあさんが
優先席を陣取る
若者のまえで
つらそうに
うつむいて
手すりにつかまって
立ち尽くしていた
常識の無さを感じた8月の午前十時気温は35℃吹き出る汗臭し

見て見ぬふりした僕はあの若者と何ら変わらない傍観者なのさ
今でもあの時のことを後悔してる
でももう過ぎたことだからと忘れるのも早く 僕はまた同じようなことを繰り返すんだろう

それも時代と割りきって 生きてしまえば
なんでも簡単に 解決してしまうんだよ
優しさや ぬくもりや気遣いなどいらない世界なら 人には心なんてまず必要はないんだ

そこにある 見て見ぬふりしてしまいそうな景色から目をそらしたら若者も年寄りも女も男も関係なくみんな同罪だ
記憶が後ろ髪を引き
後悔が心に絡みつく。

2011/08/14 (Sun)

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