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どるとるの部屋


[4676] かたちあるもの
詩人:どるとる [投票][編集]


定められた時の中で僕らは旅を続ける
許されている範囲の世界で僕らは生きるんだ

何も残らないよ
形あるものは
あなたがあなたを
なくしたら
もうあなたは
生まれない 二度と

ここにいるあなたは
ここにしかいないからただ生きているだけで特別さ
かたちあるものは全て寄せては引いていく波のよう 帰るべき場所を知っている

さよならも何もいらないから ただ側にいてと願うだけでどうしようもない別れが悲しみで満たされる
他人も家族もないよ同じ空気を吸い同じ空の下生きるなら
分別もなく助け合い人の字があらわすように折り重なって生きてみるんだよ

気泡のように生まれては消えてく人の命
まるで屑籠にゴミを捨てるような感覚でたやすく命を投げ捨てる人の愚かさを
新聞やメディアが嘆いている それでも、本当に悲しいのはその人自身だろう

黄昏時を逃した 人の瞳に映る夜が一つまた一つと消えていく
意味のないことなど何もない 無意味なことほど光が見える

わからないこと わかりたくないこと
全てに答えを出すことは難しいけれど
生きる喜び生きる希望だけは痛いほど
悲しみ押しのけてこの胸に伝わるから

かたちあるものなのに決まったかたちのない 影のようなおぼろげな命を抱えて
生きていることさえ曖昧でうやむやではっきりしない日々だけれど
ここにいたいと願うだけで あなたはあなたとして成立するよ
だからかたちあるものは全てそのかたちを保つことができる
あなたも例外じゃないはずだ

ほらなくした光取り戻す
まだまだ笑えるはずなんだ
まだまだ歩けるはずなんだ

かたちあるあなただからさ 僕も生きてみるよ

ほころびの途中にあるような 走りつづける時の果てにいつしか生まれた命の一つ 無数に降る雨粒のような僕もかたちあるものならば
跡形もなくなるまで。

2013/01/29 (Tue)

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