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どるとるの部屋


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詩人:どるとる [投票][編集]


たったひとつの物語が今静かに終わってゆく
ページをめくるその手がたどり着いた最後のページ
めくる手が止まる

ほらあれから いくつ季節が過ぎたろうか
窓の外の景色はあの頃から少しも変わらない

鏡に映る僕の姿は見えているよりも
ずっとちっぽけでまだやりたいこと
残したままなのに時間がそれを許さない

この世界にさよならを言うのなら
せめて誰かのことを心から愛せたときだと思ったのに

まだ僕は人を愛する喜びも
愛される喜びさえも知らないままだよ

止めることの出来ない運命の前じゃ
どうしようもなくてただ
悲しみに暮れ立ち尽くしたまま時の中にうずもれてく

そんな命もあることを忘れないで

平気な顔で死にたいなあなんて
言うやつを僕は好きになれない
生きたくても生きられない人もいる
それなのに残酷だ

今日は誰かの誕生日なのかもしれない
けれどほかの誰かには今日が命日かもしれない

我先にと急ぎ足の人でごった返す街の中で
僕は誰のために何を出来るだろう
自分の命見つめて考えてみる

たとえば今もなお続く戦争のある国や
いじめに苦しむ子供たちの流す涙に
少しでも寄り添うことが出来たのなら

こんな僕のちっぽけな手でも
役に立つことが出来るから
瞳の中 映る青い空より現実は綺麗じゃないけれど

僕は人を愛することを忘れないから

病室の中 静かに終わる命がある
自らの命を自らの手で捨て去る
そんな現実がほんとうにあるんだよな

この世界で生きたいと思うなら
せめて誰かのことを心から愛して思いやってみろよ

おまえも僕も人の子供だ
時には間違えることだってあるけれど

それを言い訳にすれば誰だって同じだ
だから、傷ついた人の為に何かをしたい
たとえば目の前にある涙や傷跡に寄り添うことが大事さ

生きることが絶対に正しいと言えないけれど
そうすることでしか生きられない。

2014/07/20 (Sun)

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