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どるとるの部屋


[5580] 夏を呼ぶ声
詩人:どるとる [投票][編集]


多分誰も知ることはない思いだ
線香花火のように闇に消えてゆく

青空の隙間から聞こえる子供たちの笑い声
日に焼けたような思い出が街を包んだ
半袖シャツ濡らして誰もが今だけを見つめていただろう

見てごらん星座がこんなにも
きれいに見えるのはなんでだろう
誰もが同じ台詞を何度も繰り返すよ
「暑いね」って君が言うから
僕も「暑いね」って言ったよ
それはまるで 夏を呼ぶ蝉の声

緑の中を走る風は水面を乱して
僕は相変わらず体たらくなままで

なんとなく風鈴を吊してみた東の窓に
たまに吹く風に揺れて音をたてている
いつの間にか僕は夢の中で気づけば
日は暮れて五時のチャイムが鳴る

目を閉じたような 闇の中に咲いた花
いくつも夜空に咲いては散っていく
恋の終わりは梅雨の終わり
やがてこの雨も降り止むだろう
それはまるで 夏を越せない蝉の涙

手を伸ばしてもけしてつかめないもの
それは胸の中だけに刻まれる景色

「暑いね」って君が言うから
僕も「暑いね」って言ったよ
それはまるで 夏を呼ぶ蝉の声。

2014/07/23 (Wed)

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