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どるとるの部屋


[5791] 影法師
詩人:どるとる [投票][編集]


雨上がり前の街並みは
どこか寂しげな
色に染まっている
むせかえる人いきれの中 傘を差してまでどこへ行くというのですか
行き場なんて僕らにはないのに
いつもの夕暮れ 口数は 極端に 少なく
ただ どこまでも 歩いた 疲れ果てるまで
背の高い影法師を引きずって

死にたいなんて 嘘っぱちだろう
明日もまた どうせ生きるくせにさ
だからさよならなんて 言わない
明日もまた どうせ笑うんだろう

夕立がやんだ 途端
濡れた傘を邪魔くさそうに持っている
身勝手さ わがままさ 人なんてそんなもんさ
とりあえず電車に乗って
やっつけみたいに知らない駅で降りた
いつもの夕暮れ 吐き気さえ催す 人混み
ただ いつまでも 子供のように駄々をこね
帰りたくない言い訳に遠回り

生きていれば きっといいことがある
なんてきれいごとだろう
僕は何も信じない 誰も信じない
独りぼっちも寂しいとは思わない

燃え尽きた 夕暮れは 黒く 焼け焦げて
気休めのような星が哀れに見えて
ただ どこまでも わがままな僕を
戒める 影法師が 命を確かなものにする
それが 僕には たまらなく 余計なお世話で ありがた迷惑で

生きていれば きっといいことがある
なんてきれいごとだろう
僕は何も信じない 誰も信じない
独りぼっちも寂しいとは思わない
だけど寂しくないと強がる僕は こんなにも惨めで可哀想だ。

2014/09/07 (Sun)

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