詩人:どるとる | [投票][編集] |
通り過ぎてく 車窓の景色が
風に 流されていくのをただ 眺めていた
どうでもいい 誰かの始まりと終わりを乗せて回る世界
記憶に生った果実のような思い出が
熟して 落ちて ほらもう食べ頃です
歯形を残して 食べかけのままの時間
まだあと少し笑えそうだ
まだあと少し泣けそうさ
余韻を楽しむ時間も与えられない
後味はほのかに痛みだけを伝える
開け放された時間の中では ありふれたことも幸せに見える
一気に飲み干すにはあまりにもこの世界は
惜しくて 尊くて 味わいながら
甘さのあとの苦さ
クセになる その味
まだ もう少し 生きていたいんだ
まだ もう少し 雨に濡れていたいんだ
時計が 何周も
夜と朝を行ったり来たり
何度目の夜でも
朝でも
一度きりの今だ
通り過ぎてく 車窓の景色が
名残惜しむ僕に 手を振っている
記憶に生った果実のような思い出が
熟して 落ちて ほらもう食べ頃です
歯形を残して 食べかけのままの時間
まだあと少し笑えそうだ
まだあと少し泣けそうさ。