詩人:どるとる | [投票][編集] |
笑っていました 悲しみの中でも
夕焼け空が見下ろす路に影を落として
こんなきれいな景色の中に涙は似合わない
もういいかい まだだよ
誰かの声がした
いつかの僕らも こんなふうに
見えない何かをあてどもなく探した
単純な言葉で
難なく 通じ合って
単調なリズムに
すとんと乗っかって
たとえば
ふいに 目線にちらつく
紫や赤の
あじさいに 心を染められて
やっと夏だと気づくような体たらく
ささやき声で 伝えてよ 愛を
覗き込む思い出のバケツの底に光る
あの 線香花火のほろ苦い余韻
先に落ちたほうが負けだよ
君の声がした
いつかの 僕らはあんなふうに
今をただ精一杯 生きれていたのに
企みのない笑顔で
今を 笑って
まっすぐな 気持ちで
誰かを 思いやって
たとえば
疑うことなんか知らなかったから
裏切られることも
作為的な嘘も
僕らがいた世界には何ひとつなかった
好きだよと 言えば
好きだよと こたえる
そんな 会話には
悪意はみじんもなく
ただ目の前にある
楽しすぎる毎日に
僕らは のめり込んでいた
のめり込んでいただけで
幸せになんて すぐに なれたのにいつから汚れてしまったんだろう
単純な言葉で
難なく 通じ合って
単調なリズムに
すとんと乗っかって
たとえば
ふいに 目線にちらつく
紫や赤の
あじさいに 心を染められて
やっと夏だと気づくような体たらく
ほら 今さら 心のどっかで
僕の線香花火が 落ちる 音がした
それはずっと押し殺していた涙だ
僕のほうが長続きしたのに僕の負けだよ。