ホーム > 詩人の部屋 > どるとるの部屋 > 線路

どるとるの部屋


[6405] 線路
詩人:どるとる [投票][編集]


目を閉じて 暗闇の中に心を沈めて
そっと 世界のささやき声に耳を傾ける
何気ないくらい そこにある
繰り返される生と死に誰も気づかない

通り過ぎたあの道の線路の脇に揺れる花
無造作に供えられたジュースの空き缶とお菓子の箱

ふとため息をついたら笑顔が消えた
消えかかった街路灯の明かりも消えた
ほんのかすかな希望だけ 見えただけ
やがて訪れる 雨の終わりを 待ちわびる

絶え間なく 行き交う人波に
押されながら なんとか歩いているような
日々の中で 僕は時々思う なんのために
誰のために 今を生きているんだろう
いつも答えのない答え合わせだ

そっと手紙だけ残して 見送られることもないまま
親よりも先に空に旅立った小さな命

通り過ぎたあの道の線路の脇に揺れる花
無造作に供えられたジュースの空き缶とお菓子の箱

僕は見て見ぬふりで線路を渡った
5時過ぎの夕暮れの街は 心まで冷えた。

2015/08/02 (Sun)

前頁] [どるとるの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -