詩人:どるとる | [投票][編集] |
いつからだろうこの国で戦争がなくなったのは。
戦争で人が無惨に死ぬのが馬鹿馬鹿しいとやっと気づいた政府が戦争を放棄し銃や刃物の一切をこの国から完全になくした。
銃や刃物はリサイクルされどろどろに溶かされ固められ町のオブジェや机や椅子などに生まれ変わった。
平和は約束されたのである。
だが、その代わりに少しでも政府に逆らったり平和に異を唱えるものがあらわれた場合には容赦なく射殺された。
なかには子を身ごもった女や学生などもいた。
平和と引き換えに人は戦争よりもおぞましい間違った何かで平和そのものを取り違えて
人々の自由な思想や命の尊厳を平和という名目で奪った。
戦争がなくなってそれからまもなく国家は何年もしないうちに滅びた。
戦争はその後続いたが、人々はそれでも前の国家よりは平和だと心穏やかに新しい国で毎日を健やかに暮らしたという。