ホーム > 詩人の部屋 > どるとるの部屋 > ナイトスイミング

どるとるの部屋


[7482] ナイトスイミング
詩人:どるとる [投票][編集]


泡みたいな 光がいくつも 浮かんでる

終電間近 飛び込んだがら空きの車内

適当な席に座って文庫本を開く

小説を読み上げる人の気持ちで

進んだりまた戻ったりする ページ

行間に並んだ曖昧な心が見え隠れ

短編をいくつか読み終えたあたりで

タイミングよく 駅に着く さあ降りよう

魚の真似して 泳ぐ闇の中 口を開閉

吉報はないにしろ今が笑うときならば

その瞬間に飛び込め 滑り込みセーフで

僕の人生そのままに ギリギリのラインで

ナイトスイミング

切なさに名前をつけるとしたらどうしよう

宛もなく行き交う思考が空回り

いくつかの約束と同じだけの裏切りを

花束のように 届けよう明日の君に

傷つけたい でもそれ以上に愛したい

僕の中にある 悪魔が 舌を出して笑う

目隠しをして顔の見えない会話をしよう

ふれただけですべてが解る 卑怯技で

見上げた空に流れた星に清い祈りを

差し出された手を僕は素直に握れない

ちょっと迷いながら恐る恐るの恋だ

背中あわせで 互いの鼓動を確かめる

キスより甘い名場面

つながっては ほどけてく 思いを
折り紙みたいに折って つくる
手作りの気持ち 君に届けと歌う

魚の真似して 泳ぐ闇の中 口を開閉

吉報はないにしろ今が笑うときならば

その瞬間に飛び込め 滑り込みセーフで

僕の人生そのままに ギリギリのラインで

ナイトスイミング。

2016/03/12 (Sat)

前頁] [どるとるの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -