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どるとるの部屋


[765] いわゆるひとつのお助けツール
詩人:どるとる [投票][編集]


悲しみといういわゆるひとつの映画が終わったあとぼくの瞳からこぼれ落ちた涙一滴
ほかの涙はただ流れてあとは消えてくだけなのに
なぜだかその一滴だけは運よく地面に落下せずに下水道の穴に落ちたからたすかった

こぼれた涙は意思をもちわけもわからず旅に出た、行き先も決めないで

大気中にワッと浮き出たカビかコケのように生まれたぼくらはその涙のようにこの世界にいつか生まれ
今も莫迦みたいに常識という名のルールをつねに守り続けてる
少しでもきれいでいたいと汚れた心をあふれる欲望とたたかいながら洗って

ぼくらはたかが一滴
いつかは消えるんだ
最期はお手てとお手てを合わせてお経に見送られ天に昇る、誰も
なんにしても守らねば裁かれるだけの世の中だからつねに基盤は「正しく生きる」それだけ

神様だかなんだか知らないがぼくの産みの親は母さんひとり
あんたはただいつまでも神話の中にいればいい
ぼくは涙を流すたび
思い出すのさ
下水道に流れていったはかないさだめの涙たちを

生まれ出たぼくだけがここにいて
あとはみんな分別されるように抹消されて
それでもぼくは笑ってる
消えてったしずくたちのことなどかまいもしないままよく食べよく寝てよく働いている

ぼくは今も衰えることもなくだんだん羽根をひらいていくよ
いつか 大空へ巣立つために

授かったこの命
与えられた時間
その全てに感謝しながら限りある今を流れるように旅をする

時にはいたずらだってするけれど
忘れないでいたいのはいつも人間であるということ
ただそれだけ

悲しみという名のいわゆるひとつの前半が終わり
つづいてはじまるのは
喜びという名のいわゆるひとつの後半です
その全てはひとつの映画の中で起きる様々な人生もよう
さあ 笑いましょう
悲しんだ分だけ
失った笑顔をとりもどそう

それはいわゆるひとつのお助けツールだから。

2009/12/24 (Thu)

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